日本の伝統美と現代性を併せ持つ「国宝」

日本のエキゾチシズム、オリエンタリズムは、昔も今も日本映画の魅力の一つ。戦後間もない1951年、黒澤明監督の「羅生門」がベネチア国際映画祭でグランプリを受賞し、続く52~54年、溝口健二監督の「西鶴一代女」「雨月物語」、黒澤監督の「七人の侍」などがベネチアで立て続けに受賞、54年には「地獄門」がカンヌでグランプリ(当時の最高賞)に選ばれた(衣笠貞之助監督は作品に納得しておらず、この授賞に「内容は空疎。もらった意味が分からない」と発言しているのだが)。いずれも時代劇で、日本的な様式美、倫理観が新鮮な魅力として映ったのだろう。

近年の国際映画祭では是枝裕和、河瀬直美、北野武といった監督の現代日本を描いた作品が注目されていたが、ハリウッドでは時代劇もどきや和風アクションは変わらぬ人気だ。2024年にディズニープラスの配信ドラマ「SHOGUN 将軍」が大ヒットし、ゴールデングローブ賞やエミー賞などを席巻したことは記憶に新しい。