中銀総裁は金融政策の限界を主張

しかしナビウリナ中銀総裁の立場からすれば、また違った光景が見えてくる。確かにロシア景気は年明けに失速しているが、最新5月の消費者物価は9.9%と、2カ月連続で伸びが鈍化したとはいえ、引き続き高インフレである。ロシア中銀は6月に政策金利を21%から20%に下げたが、高インフレが続く中で、追加利下げには慎重な姿勢である。

エリヴィラ・ナビウリナ中銀総裁
エリヴィラ・ナビウリナ中銀総裁(写真=Ekaterina Shtukina/Kremlin.ru/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

そもそも、ロシアの高インフレは、民需が軍需による圧迫を受けているために生じている。戦時下にあるロシアでは、軍事関連のモノやサービスの生産が優先される一方、それ以外のモノやサービスの生産は後回しとなっている。つまり、民需が軍需に圧迫されているわけだが、ここで民需を刺激する利下げを行えば、高インフレが長期化する。

つまり、民間部門では、高インフレの源泉が供給減にある。ここで利下げを行い、需要を刺激すれば、供給と需要の両面からインフレがさらに刺激される。そうなればインフレが制御できなくなるため、経済や金融に強い負荷がかかると、中銀のナビウリナ総裁は考えているのだろう。中銀としては、至極真っ当な経済運営観であると評価できる。