ダブルスタンダードが最も危ない

たとえば、デザイン監修の仕事。引き受ければ利益にはなる。だが、自分たちで責任の持てない製造、顔の見えないものづくりには、「中川政七商店」として関わらないと決めている。実際、他社ブランドのデザイン監修のようなビジネスは断ってきた経緯がある。

「もちろんご依頼いただくこと自体はありがたいと思います。でも、そこに甘えると、一度きりでもダブルスタンダードになる。それが一番危ない。社の価値判断がブレると、会社全体がもろくなる。だからこそ『利益よりビジョン』という順序だけは守り続けています」

千石さんは、こうも言う。「職人さんたちは、かつては産地問屋からの注文に応えていれば暮らしていけました。でも、安価な輸入品が増え続けたことで注文が途絶え、その仕組みが崩れました」。突然、職人たち自身に「経営」が求められる時代になった。ならば市場を知り、商品設計をし、販売ルートをつくる。中川政七商店は、そんな“工芸の経営化”をコンサルティングという姿勢でも支援していくのだ、と。