日銀が4月に発動した“異次元”金融緩和が、3メガバンクグループの収益に影を落とす。3グループの2013年3月期連結決算は、最終利益の合計額が前期比11%増の約2.2兆円と、7年ぶりの高水準に。しかし、14年3月期は頼みの綱の国債売買益が“異次元”緩和の影響で大幅に圧縮される見込みで、好決算に酔った「宴」は終わりそうだ。
3グループが5月15日に発表した13年3月期決算は、最終利益で三井住友フィナンシャルグループ(FG)が前期比53.1%増の7940億円と過去最高を更新、みずほFGも15.6%増の5605億円と大きく伸ばした。最大手の三菱UFJFGこそ13.1%減の8526億円と減益に終わったものの、前の期に資本提携先の米モルガン・スタンレー関連の利益を計上した反動であり、これを除けば実質的には大幅増益である。
が、14年3月期は収益環境が厳しく、揃って大幅減益を見通す。3グループが予想する最終利益の合計額は1兆8400億円と前期から17.7%目減りする。
「今後は国債売買益が減る」(平野信行・三菱UFJFG社長)ためだ。“異次元”緩和が債券市場を揺るがし、長期金利が上昇するといった“副作用”も生んでおり、高金利が続くようだと大量の国債を保有するリスクも生じる。
このため、昨年11月以降の「アベノミクス」のアナウンス効果から金利が低下し、含み益を抱えた国債を売り、利益を挙げた前期のような展開は期待できない。実際、前期に国債売買益で3300億円程度を稼いだ三菱UFJFGは、14年3月期が1000億円強まで減ると見通す。さらに、3グループは金利変動リスクを見越し、国債保有残高を減らす方向に傾いている。稼ぎ頭の国債売買益を失うという転機を迎え、3グループは新たな収益の糧を見出さねばならない。
しかし、国内での企業の資金需要への「アベノミクス」の効果はまだまだ薄い。1~3月期の国内総生産(GDP)が年率換算で3.5%増と高い伸びを示したにもかかわらず、主要項目で唯一、設備投資がマイナスとなった。企業の設備投資への意欲は依然慎重で、3グループは好調な海外融資に加え、新たな資金需要の発掘に躍起にならざるをえない。