日立製作所やパナソニック、ソニーなど電機大手9社合計の6期累計投資CFは、約18兆円の出金超である。パナソニックが三洋電機やパナソニック電工を完全子会社化したり、シャープが大阪府堺市に液晶パネル工場を新設と、大手9社は過去6年間、企業買収や設備投資に18兆円を投じてきたといっていいだろう。

そしてその結果はといえば、6年間の9社合計で10兆円に迫る純損失だった。パナソニック、ソニー、NECなどが大規模なリストラを迫られ、シャープが台湾企業の資本を受け入れざるをえなかったのは必然だろう。

同様に計算すると、「自動車・二輪」9社の場合は、28兆円を投じて8兆円強の純利益を計上と、30%弱の回収率である。投資規模が断トツな業界だけに、ややモノ足りない数値だ。

もっとも回収率が高かったのは「造船重機・建設機械」で、70%弱。一方、10%台の低い数値にとどまったのが「エネルギー・建設・不動産・住宅」だ。東京電力の巨額最終赤字が数値下落の最大の要因だが、油田やLNGなど海外でのエネルギー開発には巨額の投資資金を要するだけに、リスク管理が将来を左右するキーワードになってくることはいうまでもない。

海外M&A加速の「医薬」「ビール」

投資CFにおける海外企業買収の占める割合も増えている。国内需要の減少がはっきりしているだけに、買収先の選択眼はこれまで以上に重要になる。

医薬品やビール各社はここ数年、競うように大型の海外M&Aを実行。武田薬品工業にいたっては、1兆6000億円を超す手持ち現金を4500億円にまで減らしても、あえて海外医薬品メーカーの買収を繰り返してきた。

ただし、その武田を含め、アステラス製薬や第13共、キリンホールディングス(HD)、サントリーHD、アサヒグループHDなど、巨額投資に見合う成果がまだはっきりと見えてこないのが現実。買収選択眼の巧拙を含め、今後の推移に注目したい。

もちろん、企業の持続的成長に投資活動は欠かせない。しかし、その資金は営業活動で獲得した資金を原資とするのが基本だ。自由に使える余剰資金を指す「フリーCF」という言葉を、新聞などで目にする機会が多くなっているが、求める計算式は「営業CF+投資CF」。これまで触れたように、営業CFは入金超、投資CFは出金超であるのが一般的なことから、両数値の差額ととらえたほうが理解は早い。もちろん、プラスが望ましい。