10年続く夏のイベント

「降りかかる災いから、お守りいたします!」(コスプレイヤー=E子 撮影= Russell Yei)

真夏の暑い日、JR秋葉原駅前の広場でメイド姿の女の子たちがずらりと並び、「涼しくなーれ!」と声を掛けながら、桶から素手で水を一斉に撒くイベントがあります。この「うち水っ娘大集合!」は今年の夏で10年目を迎えます。

真夏に都市部の気温が異常に上昇する「ヒートアイランド現象」の対策として、最も暑い日とされる大暑の日に全国一斉に打ち水をするイベント「打ち水大作戦」がもともとありました。その打ち水イベントを秋葉原でもやってみたいと考えたある若者の呼びかけで、メイドカフェ数店舗の協力で行われたものが「うち水っ娘~」の始まりです。最初の試みから多くを集客し、イベントの規模は急速に拡大していきました。今では地元行政の千代田区も後援に入り、メイドカフェ以外も含む、秋葉原のさまざな店舗や団体が協力して行われる秋葉原の夏の風物詩になっています。

主催者は、打ち水イベントの実行委員会から立ち上がったNPO法人「秋葉原で社会貢献を行う市民の会リコリタ」。「リコリタ」とは、利己を利他に換える、つまり「自分の好きな活動で社会に貢献しよう」という意味です。多くの非営利団体と同様に、寄付や協賛を募りつつも、自分たちの手弁当で賄っています。打ち水イベントの際は、その注目度を活かして、うちわなどの現物を企業から協賛品として得ているそうですが、無報酬で協力し手伝ってくれる秋葉原の店舗やボランティアの人たちが最大の活動資源です。

協力店舗やボランティアの人たちには、「大好きな秋葉原に貢献したい」という共通の想いがあると「リコリタ」の代表者——最初に呼びかけた若者——は言います。それゆえに秋葉原の打ち水イベントは、単にメイド姿の女の子たちが水を撒く「利己」的な戯れごとではなく、さまざまな人々がつながり、秋葉原を盛り上げようとする「利他」的な活動として存続できたのでしょう。

そして、さらには秋葉原特有のある想いが、このイベントには込められているのです。