新NISAが始まって以降、投資への関心は高まっている。今年1月に原発不明ガンで亡くなった経済アナリストの森永卓郎さん(享年67)は「私から言えば、新NISAはお金をドブに捨てるようなものだ。老後の生活が不安だからと言って投資をするのは間違っている」という――。(第1回)

※本稿は、森永卓郎『やりたいことは全部やりなさい 最後に後悔しない25のヒント』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

JPX東京証券取引所
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「資産形成」しなくても豊かな老後は送れる

常識→資産形成をしなければ、老後は不安
真実→投資は無用。シンプルな生活で豊かに暮らせる

私も67歳になり、自分自身を含めて、年齢の近い知人はみんな年金受給生活になっています。彼らを見ていてつくづく思うのは、特に「資産形成」なんかしなくても、心身ともに豊かに老後を過ごすことは十分可能である、ということです。

私の周りの年金生活者たちは、大きく2つに分けられます。1つは都市部での生活にこだわり、年金受給年齢に達してからも働いている人たち。もう1つは、都市部での生活を捨て、都会と田舎の中間あたりでのんびり暮らしている人たちです。そしてどちらのほうが幸せそうかというと、圧倒的に後者なのです。

高齢になってもなお、都市部での生活を維持しようとしている人たちは、すごくつらそうです。会社を引退してからも働こうと思ったら、残されているのはブルシット・ジョブくらいしかありません。やりがいのかけらもなく、苦しいだけの「クソどうでもいい仕事」をして、何とか都市部の片隅で食いつないでいるというのが、彼らの多くが生きている現実です。キラキラした都会のよさを味わい続けるためには、収入がまったく足りないのです。

「トカイナカ」生活はメリットだらけ

一方、後者のグループはどうでしょう。都会と田舎の中間、私が名づけたところの「トカイナカ」は不動産が都会に比べ安価です。現役のうちに数百万ほど捻出して家を買っておけば、多少の維持費や固定資産税が生じるだけで、毎月の家賃はゼロです。

生活コストだって、言うまでもなく都市部より圧倒的に低い。これに加えて畑を耕し、太陽光発電を備えつければ、食費や電気代もかなり抑えられます。

そんななか、トカイナカで暮らしている彼らのような人たちは、晴耕雨読で趣味に興じながら、わずかな貯蓄と年金の範囲内で十分豊かに暮らしています。ある人は音楽が趣味で、ずっと挑戦してみたかったドラムセットを購入し、近所の同好の士たちとバンドを組んだそうです。確かにトカイナカなら、思い切りドラムを叩いても苦情は来ませんね。実は私も、最近、ギターを2本買いました。といっても高級なものではなく、どちらもフリマアプリで2000円程度でした。

さて、そんな両者の違いを踏まえて、改めて問いたいのは「資産形成は本当に必要か?」ということなのです。