イベントコンパニオンが泣く「改正労働者派遣法」
:カウンセラーや癒やしのビジネスの需要が高まる
リーマンショック後の不況下で「派遣切り」が大きな社会問題になったことを受けて、論議が続いてきた労働者派遣法の改正であるが、12年3月に「改正労働者派遣法」が成立して、10月から施行された。
改正された点は、派遣元企業に手数料割合(派遣料金と派遣労働者の賃金の差額、いわゆるマージン)の公開や、雇用の際に派遣労働者1人あたりの派遣料金の明示を義務付けるなど、改正法では派遣労働者の待遇改善につながる規制が強化されている。
一方、事業規制としては30日以内の短期派遣が原則禁止になった。当初は仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」や「製造業派遣」の原則禁止が盛り込まれたが、削除された。
「今回の改正法の本音は、企業に『派遣社員を減らして正社員を増やせ』ということです。しかし現実には企業は正社員数を絞る傾向にある。今の時代、正社員を切るのは大変だから、最低限の正社員しか採らない。すると今回の法改正によって、企業にとっては忙しいときに短期的に雇っていた派遣労働者が使えなくなるかもしれないと、残った正社員や非正規社員の仕事の負荷が上がってくる可能性があります」
ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏はこう語る。一方、今回の改正法で保護されるはずの派遣労働者だが、現実は厳しい。30日以内の短期派遣の原則禁止という新規制のため、働き先が制限されて仕事にあぶれる労働者も出てくるだろう。日雇い派遣に当たるイベントコンパニオンの仕事なども規制に該当する。イベントコンパニオン泣かせの「改正労働者派遣法」になりかねない。
「イベントコンパニオンとか、コンサートの警備員とか、日雇い派遣で働いていた労働者は派遣という形態では仕事ができなくなる。すると、直接雇用か、職業紹介という形になってくる。その意味ではハローワークが復権する可能性もある。人材派遣会社も短期派遣では食べられなくなり、紹介料の取れる人材紹介業に軸足を移す動きが出てくると思います」(森永氏)
よし悪しは別にして、派遣労働者は景気変動における雇用の調整弁として機能してきたが、これからはその役割を果たさなくなるかもしれない。今回の改正法は改悪になりかねないと、深野氏は指摘する。
「派遣を使えなくしたからといって、正社員が増えるわけではない。今回の改正法は正社員にも派遣社員にもメリットが少ない。むしろ労働環境が厳しくなって、うつ病などが増えてくる恐れもあります。カウンセラーや癒やしビジネスの需要が高まったり、宗教的なものが流行る素地になるかもしれない。非正規で働けなくなり、年金や健康保険料の未納が増えるでしょう」