製粉大手ニップンの食品事業が好調だ。2025年3月期第3四半期決算では、食品事業の売上高1816億9600万円(前年同期比5.3%増)のうち、冷凍食品事業の躍進が目立った。中でも主食と主菜をワンプレートで提供する「よくばりシリーズ」が好調だという。冷凍食品マイスターのタケムラダイさんは「50年のロングセラー商品もある冷凍食品群で、超新星が棚を席巻するのは快挙だ」という――。
「よくばり御膳 鶏と野菜の黒酢あん」真ん中はトレー盛り、右は皿盛りをイメージ
提供=ニップン
「よくばり御膳 鶏と野菜の黒酢あん」真ん中はトレー盛り、右は皿盛りをイメージ

「ごはん+おかず」のジャンルで首位を独走

冷凍食品売り場は、常に変化し続ける時代の姿を映し出す万華鏡のようである。半世紀以上にわたり、私たちの食卓を支えてきたレジェンド級のロングセラー商品がある一方で、近年は目まぐるしく変化する食のトレンドを捉えた新商品が続々と登場し、売り場を賑わせている。

かつて画期的と呼ばれた冷凍食品も、今や私たちの食卓に欠かせないあたり前の存在となった。しかし、その裏側では、熾烈な競争と淘汰が繰り広げられ、時代の変化に取り残された商品は、静かに姿を消していくのだ。

消費者のニーズに応えるべく多様化し続ける冷凍食品の中でも、特に注目を集めているのが、主食と主菜をワンプレートで提供する、いわゆる「ワンプレート冷食」と呼ばれるジャンルだ。店頭では300円台後半が多く、コンビニ弁当を買うよりも手ごろな価格設定になっている。

昨今では冷凍食品業界大手各社がこの波を逃すまいと新商品の開発に取り組んでいるが、このワンプレート冷食というジャンルを開拓したブームの火付け役と言っても過言ではない商品がある。

それがワンプレート冷食というジャンルにおいて常にNo.1の売り上げを誇っている、ニップンの「よくばりシリーズ」なのだ。販売金額100億円を超えるジャンルで3分の2近くのシェアを占めるとされている。冷凍食品業界に新たな風を吹き込んだ超新星が現在のブームを起こすに至るまでの軌跡を詳しく解説していこう。

「よくばりプレート 2種のグリル&彩り野菜カレー」
提供=ニップン
「よくばりプレート 2種のグリル&彩り野菜カレー」

開発のきっかけは「冷凍食品への不満」

「よくばりシリーズ」の開発が始まったのは、2014年秋のことである。当時の冷凍食品市場では、大盛りパスタが人気を博していた。しかし、開発チームは、冷凍パスタだけでは満足できず、2個食べたり、ハンバーグなどのおかずを用意したりする消費者が少なくないことに着目した。

「量だけでなく、多くのおかずを食べたい」というニーズがあるのではないか。

冷凍食品を2つ温めると、時間もかかり、2つ目を温めている間に1つ目が冷めてしまうという問題点もあった。一度のレンジ調理で複数のものが同時にできあがる商品があれば、消費者の利便性は格段に向上するはずである。

これらの課題を解決するために、ニップンの開発チームは「大人向けのお子様ランチ」をイメージし、主食と主菜をバランスよく食べられる一食完結型の商品開発に着手した。量でも品数でも満足できるメニューを目指し、試行錯誤を重ねた結果、「よくばり」シリーズが誕生したのである。