※本稿は、中野晴啓『ほったらかし投資はやめなさい』(宝島社)の一部を再編集したものです。
新NISAによってインデックス運用が大人気に
2018年1月に「つみたてNISA」という制度が導入されたのを契機に、個人投資家の間でじわじわと浸透していったのがインデックス運用でした。
市場の平均的な値動きを示す特定の指数に連動するインデックスファンドに、毎月定額の積み立て方式で資金を投じていくというものです。
常に市場の平均的なパフォーマンスを享受できるというわかりやすさと堅実性から、インデックス運用で初めて投資にチャレンジする人も出てきました。もっとも、それでも裾野の広がりは限定的で、もともと投資に少なからず興味を示していた人たちが中心だったといえます。
強烈なインデックス運用ブームが発生したのは、2024年1月に新NISAがスタートしてからです。
それまで投資には無関心だった人たちも巻き込み、新NISAの「つみたて投資枠」を通じたインデックス運用が瞬く間に一般化しました。
圧倒的人気は「S&P500」「オルカン」
様々な指数に連動するインデックスファンドが存在していますが、圧倒的人気を獲得したのは、米国の主要な株価指数であるS&P500、グローバルな株式市場の全体的な推移を反映する全世界株式(オールカントリー=略称:オルカン)に連動するタイプです。
これらの指数に連動するインデックスファンドは数多くの運用会社が設定・運用していますが、いずれも当然ながら同じような推移を示すコモディティ(汎用品)であるため、その中で最もコストである信託報酬(=投資信託の保有中にかかる手数料)が安い商品に人気が集中しています。確かにインデックス運用は、誰でも気軽に始めやすいものだといえるでしょう。
初心者や投資経験の浅い人が最も悩むのは投資信託選びですが、市場全体に投資するインデックスファンドなら、どの指数にするのかを決めるだけで済みます。
そして、選んだ指数に連動するファンドの中で最もコストが安いものにするのも、非常に合理的な判断でしょう。いずれもその指数に連動する運用実績なら、手数料負担による目減りが最も少ないものを選ぶのが正解です。
S&P500とオルカンに人気が集中したことも、大いに納得できる話です。米国の株式市場は世界最大で各国から資金が流れ込んでおり、世界経済の成長にリンクした運用成果を期待できるオルカンも非常に理解しやすいでしょう。
NISAの制度拡充を機に投資を始めた人たちにとって、S&P500やオルカンに連動するインデックスファンドの存在は、チャレンジのハードルを大きく下げてくれる効果があったといえるでしょう。
さらに、ほったらかし投資が可能なことも、インデックスファンド人気に拍車をかけました。
運用実績が特定の指数に連動するので運用状況を注視する必要もなく、自動引き落としで積み立て投資を続けながら、そのまま放置しておけることに魅力を感じた人も多く、「退屈だけど着実」という観点から、ほったらかし投資もブーム化しました。