生徒の保護者から、理不尽なクレームを受けた場合、教師はどのように対応しているのか。10年以上中学校教諭を務めた静岡の元教師すぎやまさんは「学校は保護者である限りどんなに怒鳴っていても追い返すことはできないし、居座られても警察を呼ぶこともできない。トラブルやクレームに関して、腰を低くしてどうにか穏便に済ませるという手段を第一にせざるを得ないのが現状だ」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、静岡の元教師すぎやま『教師の本音 生徒には言えない先生の裏側』(SB新書)の一部を再編集したものです。

権威の乱用
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保護者からかかってきた電話

「テストの点数、上げてもらえませんか?」

保護者からそんな電話がかかってきたことがあります。いやいや(笑)、そんなことあります? 初っ端から冗談キツいよ、と思われると思いますが、残念ながら実話です。

それは定期テストが終わった後のことでした。学年主任に呼ばれて電話に出ると、相手は担任しているクラスの生徒の保護者。

「先生、うちの子、今回の数学のテスト、すごく点数悪かったんですよ」
「あぁ、まぁたしかにそうですね……」
「あの……点数、上げてもらうことってできませんか?」
「えっ?」

正直、意味がわかりませんでした。

「点数上げるって、どういうことですか?」
「こんな点数見せたら、パパ(夫)が怒るから、怖くて見せられないんですよ。怒られたら娘も可哀想だし……少しでもいいんで、何点か上げてくれませんか?」
「いや……さすがにそれは学校の信用に関わるので、そういうことはできません」
「そうですよね……わかりました」

幸いなことに、この件はこれで終わりました。まあ、モンスターペアレンツとまでは言えないような、笑い話かもしれません。

保護者からのクレームはかなり多い

本書ではいくつかこういう私の体験談をお話ししていますが、今でも根に持っていて、恨み節を言いたいという意図ではなく、あくまでも学校の実情を伝えるためのビックリエピソードとして聞いてもらえたらなと思います。

ただし、教員には守秘義務もあるので、個人が特定できないようにするため、内容は一部脚色していることはあらかじめご了承くださいね。

さて、こういう保護者からのビックリするようなクレーム、学校現場ではかなり多いのです。もちろん学校に問題がある場合も多いでしょう。それは真摯に対応していかなくてはなりません。

でも問題なのは、そうじゃないケース、つまり保護者があまりに理不尽なクレームを入れてくること。いわゆる『モンスターペアレンツ』です。

次にご紹介するケースはもっと深刻でした。