日本各地で再開発が進んでいる。その中で特異的なのが大阪駅前だ。巨大ターミナル駅前には、巨大な公園が完成した。なぜ大阪ではそうした大胆な再開発が可能だったのか。そして、なぜ東京ではそれができないのか。ライターの鬼頭勇大さんが取材した――。(第2回)
都心の再開発はイマイチな評価ばかり
3月27日、JR東日本が山手線の「高輪ゲートウェイ駅」周辺で進めている再開発事業「高輪ゲートウェイシティ」の一部が開業した。広さ9.5ヘクタールの敷地に4棟の高層ビルや文化施設が設けられる予定だ。
近年、都市部には「再開発」によっていくつもの建造物が誕生している。ただ、大成功と手放しで評価されているところはそう多くはない。
仕事柄さまざまな再開発エリアに取材に行くが、入居しているのは似たようなテナントばかり。新しい店舗ができたと思ったら高価格帯で手が出ない。さらに億を超える価格のタワマンに、「誰が泊まるの?」と感じるような価格のホテルが構えることもしばしば。
実際、最近鳴り物入りで登場したにもかかわらず、思ったほどの評判を得ていない施設も多い。
森ビルが2023年11月に開業した「麻布台ヒルズ」はそのひとつだろう。およそ35年もかけて、地権者などとの交渉を重ねた末に「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」として完成した。
複数のビルから構成され、ハイブランドや日本初上陸と銘打った飲食店がずらりと並び、開業当初は多くのお客を集めたが、オープンから1年たった現在、SNSなどでは「ガラガラ」「廃墟化」といった手厳しい声が散見される。
地元住民向けのテナントとしてそれまで近隣になかった大規模食料品売り場として、麻布台ヒルズ マーケットが入っている。ただ、こちらも価格はお手軽とは言えない。いくら港区・麻布台に住んでいる人といえども毎日高級食材ばかり食べているわけではないはずだ。銀座にディスカウントス-パー「オーケー」がオープンして話題を呼んだのとは好対照である。