韓国キアのノルウェー部門は、これを茶化した画像をインスタグラムに投稿して話題を呼んだ。「イーロンが常軌を逸したので(キア車を)買いました(I BOUGHT THIS AFTER ELON WENT CRAZY.)」とのステッカーを、自社のコンパクトSUVであるEV3に貼った画像だ。投稿はその後、削除されている。

株価50%急落で漏れたマスク氏の弱音

先進的な自動運転EVで知られてきたテスラだが、人気の急降下は明らかだ。

米CNBCの報道によると、イーロン・マスク氏のホワイトハウス就任から2カ月が経過する中、テスラオーナーが過去に例を見ない規模で電気自動車を手放している。全米の自動車取引サイト・エドマンズが発表した統計では、3月に入ってテスラ車から他のメーカーに乗り換える割合が「過去最高」に達した。

ライバル社には好機だ。エドマンズのインサイト部門責任者ジェシカ・コールドウェル氏はCNBCへのメールで、「テスラに対する消費者の心理変化は、従来の自動車メーカーやEVベンチャーにとってシェア拡大のチャンスとなる」と説明した。「テスラへの顧客忠誠度が低下する中、魅力的な価格設定や革新的技術、あるいは単に論争から距離を置く姿勢を打ち出す企業が、テスラから離れる所有者や新規EV購入者を取り込むだろう」と分析している。

テスラの株価は、直近3カ月で50%の下げ幅を記録した。さすがのマスク氏も、言動に焦りがにじみ出る。米ブルームバーグは、マスク氏が3月21日、テキサス州オースティンで突然の全社集会を開いたと報じた。彼はそこで「ちょっとした荒れ模様」の時期にあるが、従業員らに「株式を手放さないでほしい」と訴えた。

集会は現地時間午後10時を過ぎても続いたという。マスク氏は社員たちに、「ニュースを見ていると、まるで世界の終わりのような気分になる」と暗い心境を語っている。「テレビをつけるたび、燃えるテスラ車が映し出されている。我々の商品を買いたくないのは分かるが、それを燃やす必要はないだろう」と述べ、テスラ車が狙われる現状に反発した。

トランプ氏がテスラ支援に乗り出す

一方で、テスラを支援する動きもある。

トランプ大統領はマスク氏への連帯感を示すため、ホワイトハウスでテスラ車の展示会という異例のイベントを開いた。米ワシントン・ポスト紙の報道によれば、トランプ大統領はホワイトハウスの敷地内にテスラ車を並べ、記者会見と宣伝活動を兼ねた催しを開いている。トランプ氏は、展示された赤いモデルSを自分用に選んだと明かすなど、テスラブランドを公の場で称賛した。

2025年3月11日、イーロン・マスクとともにメディアの取材に応じるドナルド・トランプ大統領
2025年3月11日、イーロン・マスクとともにメディアの取材に応じるドナルド・トランプ大統領(写真=The White House/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons