まず考えられないことだが、仮に米国がロシアの事業者による米ドルの利用を容認したとしても、再び制裁を科されるリスクに鑑みれば、ロシアの事業者は米ドルの利用に消極的とならざるをえない。それは国際銀行間通信協会(SWIFT)に復帰できても同様だ。再び排除されるリスクがあるなら、SWIFTへの復帰はあまり意味を持たない。

ロシアにとって意味を持つ制裁の解除があるとすれば、ロシア中銀がニューヨーク連銀に預けている在外資産の凍結の解除ではないだろうか。米国は経済・金融制裁の一環として、ロシア中銀がニューヨーク連銀に預けている米国債や金資産へのアクセスを遮断している。これを解除させた後、金塊にしてロシアに現送する可能性が意識される。

しかしロシアは、2014年のクリミア侵攻以降、米国から制裁を科されるリスクに鑑みて、外貨資産(外貨準備)の米ドル比率を下げ、ユーロやポンドといった他のハードカレンシー建て資産に振り替えてきた。その結果、2021年6月時点でロシアの外貨準備に占める米ドルの割合は16.4%まで低下し、代わりに32.3%がユーロとなっていた。