仕事のパフォーマンスやメンタルヘルスに影響

難聴にはさまざまな原因があり、ヘッドホン難聴に限らず、その状態に至ると、日常のコミュニケーションだけでなく、仕事の生産性や社会生活にも大きな影響を及ぼします。日本ウェルリビング推進機構の調査によると、約7割の難聴者が仕事のパフォーマンスに影響を感じていると報告されています。聴力が低下すると、会議や電話でのやり取りが困難になり、業務効率が下がるだけでなく、周囲との意思疎通の負担が増します。重度の難聴では就業の選択肢が限られてしまうことも少なくありません。

また、難聴はメンタルヘルスにも影響を及ぼします。聴こえにくさから会話が減り、孤立感が強まることで、うつ病や不安症のリスクが高まることが分かっています。実際に、65歳以上を対象とした研究では、難聴者は健聴者に比べてうつ症状を発症する確率が約2.5倍高いと報告されています(坂本秀樹「難聴者の福祉とQOL向上のための理論再構築と評価デザイン」2022)

交通事故や転倒のリスクも上昇する

さらに、周囲の音が聞こえにくくなることで、危険の察知が遅れ、交通事故や転倒のリスクが上昇します。加えて、聴覚刺激の減少は脳の活動低下を招き、認知機能の低下や認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。研究では、難聴の程度に応じて認知症の発症率が上昇することが示されており、難聴が認知機能の低下に関与している可能性が示唆されています(坂本 2022)

このように、難聴は単に聴こえにくくなるだけでなく、仕事のパフォーマンス、メンタルヘルス、さらには認知機能にも影響を及ぼす重要な問題です。早期の対策が、健康で充実した社会生活を維持するための鍵となります。

会議で話し合うビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

ヘッドホン難聴は、ビジネスパーソンにとっても無視できない健康リスクですが、防ぐことができる難聴です。イヤホン・ヘッドホンの使い方を見直し、「聞こえ」を大切にしましょう。

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