※本稿は、大野栄一『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(日経BP)の一部を再編集したものです。
誰にでも共通する「学びのスタイル」
学びとは、「他人から教わるものではない」という結論
誰にでも共通する「学びのスタイル」があります。
どのようなスタイルだと思いますか?
本を読むことでしょうか? セミナーに通うことでしょうか? あるいは講師に教わることでしょうか?
実は、どれも正解ではありません。
正解は、「自分自身に教わる」ことです。
多くの人は「学びとは、他人から教わるもの」と考えていますが、実際には、学びは人から与えられるものではありません。
私がたどり着いたのは、
「自分が自分に教えたことしか学ばない」
「あなたがあなたに教えたことしか学ばない」
という結論です。
たとえば、経営者が社員に「こうしよう」と伝えても、社員自身が「自分に教える」段階を経なければ学ぶことはできません。コンサルタントが経営者に「こうしよう」と提案しても、経営者が自らの意思でそれを「自分に教える」ことをしなければ、やはり学びは起こりません。
リーダーが部下に「こうしよう」と促しても、部下自身が納得して自分に教え込まない限り、学ぶことはできないのです。
「自分が自分に教えている」状態とは
では、「自分が自分に教えている」「自分が自分から教わっている」とはどういう状態でしょうか。
たとえば、日常的に「仕事って大変だよね」と思い続けていることは、自分自身に「仕事は大変なものだ」と教え込み、それを学び続けているのと同じです。
目の前の出来事に対して、「これは重要だ」と感じていれば(=自分にそう教え込んでいれば)、人は積極的に学びに変えることができます。
一方、「これは自分には関係ない」と判断した時点で、たとえどれほど優れたノウハウが示されても、取り入れることはできません。
多くの人は「誰かが教えてくれる」という感覚を持っています。ですが、「自分は自分からしか学べない」という自覚が芽生えたとたん、学びや思考の質感が一変します。
そして、リーダーがこの自覚を持たない限り、どれほど指導をしても部下は成長しません。なぜなら、部下自身も「自分に教えたこと」しか学ばないからです。リーダーの本当の指導とは、部下に対して、
「あなたはこれまで、あなた自身に何を教えてきたのですか?」
「あなたは自分の目標を達成するために、あなた自身に何を教え込んできたのですか?」
と問いかけることなのです。