聴力低下は放置せず、補聴器を使おう

「わたし自身、会議では集音器を使い始めました。今のところ、1対1、一対少数の会話ではまったく不自由はしていません。しかし、大人数の会議になると、出席者の発言が少し聞こえにくくなってきました。それで、会議になると集音器を付けて参加しています。そういうところはカッコつけないほうがいい。

また、高齢になると視力が落ちてきます。しかし、視力が落ちても認知症にはあまり関係がないんです。今のところ有意差のデータが示されているのは聴力です。聞こえなくなってきたら専門医に相談して補聴器か集音器をつける。

つまり、大切なのは周囲とのコミュニケーションです。社会的な孤立は認知症のリスクを高めます。そして、勉強しない人。これもダメです。学歴とは関係なく、年をとっていても何かを学んでいる人はボケることはありません。一流大学を出て、一流企業に入った人でも、勉強を続けない人、学習しない人はやっぱり認知症になりやすい」

ねりま健育会病院の酒向正春院長
ねりま健育会病院の酒向正春院長

あおり運転やクレーマーが認知症リスクを高める理由

あおり運転、クレーマーといった行動をする人も認知症になりやすいという。先生は説明する。

「あおり運転やお店でクレームをつける人って、自分なりの正義感を持っている。ただし、ユーモアがない。自分はよくて相手が悪いと一方的に決めつけています。そういう人って幸せではないんです。思考が一方的で、楽しいことを見つけていないから、ネガティブな感情にとらわれてしまう。

幸せになろうとするのであれば、他人のいいところを見つけて、褒めてあげること。他人を激励して頑張っていることを褒める。そうすれば相手も感謝します。人から感謝されるのはとても幸せなことですよ。

先ほど、ユーモアがない人は認知症になりやすいと言いました。ユーモアがなくてもいいから、少なくとも一日に一度は笑うことです。無理にでも口角を上げて笑顔になる。それを無意識のうちにできるようになれば余裕が生まれてきます。

ユーモアって、人間が持つ余裕だと思うんです。ただ、若い頃はなかなか余裕は持てませんよね。定年退職した人は余裕を持つチャンスです。前を走っている車がスピードが遅かったら、サービスエリアにでも入って、コーヒーでも飲むこと。デパートやコンビニの店員さんの態度が悪かったからといって怒鳴ったりしないこと。態度の悪い店員がいたら、怒るのではなく、買うのをやめればそれで済むんです。

あおり運転やクレーマーになることは認知症への早道だと思えばそういうことはしなくなります。年をとった人間にできることって生活に余裕を持つことなんですよ。誰かから優しさを受けたら、それを笑顔ですべて受け入れる優しさが脳を快適にするんです」