ヨボヨボになる男性、イキイキする女性の違い
酒向先生がコミュニケーションと同じように「大切にすべき」と言っているのが感受性だ。感受性が豊かな人は人間味があるから、周囲から愛される。愛情に囲まれて生きていくのは幸せだ。逆に感受性がにぶいと今度は周囲から見放されてしまう。
先生は言う。
「定年退職すると会社というコミュニティから解放されます。それで、次はどういうコミュニティに入るかといえば、これは地域のコミュニティなんです。地域のコミュニティでは会社で役員だったとか部長だったことは通用しません。町内会の会合で『僕は専務だった』という話ばかりしたら、周りは白けてしまう。
定年退職して幸せになろうと思ったらそれはもう気持ちを入れ替えることです。いつまでも会社の役職にこだわっていたら相手にされません。実はこういう人は多いです。認知症になる男性で感受性が鈍い人は実に多い。
女性はたくましいです。会社を辞めたら、もう肩書をひけらかすことはありません。地域の中に溶け込んで自分の居場所をちゃんと作ります。家に定年退職した夫を残して、ひとりで山登りしたり、ヨガの教室に通ったりしています。そういう女性たちに見習うべきです」
もう一度、妻に恋しよう
わたしはここで質問した。
「酒向先生、感受性といえば恋愛はどうなのでしょうか? 『恋は遠い日の花火ではない』という宣伝の文句もありましたが、熟年からの恋愛は認知症を防ぎますか?」
酒向先生は即答した。
「はい。奥さまかパートナーを愛してあげてください。もう一度、奥さまと恋愛してください。不倫は結局、長続きしませんし、奥さんと不仲になるだけです。家庭で孤立すると、それは地獄に等しい。不倫などせずに、奥さまに愛情を傾ける。
もっとも奥さまのほうはあまり旦那のことは考えていないかもしれません……。それでも奥さまを愛する。伴侶性を高めることが重要です。それは奥さまが認知症になることも防ぎます。また、恋愛すると誰でも身だしなみに気をつけます。身の回りがだらしなくなるのは認知症の初期でもあります。ゴミ屋敷に住んでいる人はたいてい認知症ですから。そこは気をつけてください。
また、恋愛の延長として子ども、孫、ペットを可愛がる人もいますけれど、これも悪いことではありません。ペットを飼うのも、お孫さんにお小遣いをあげるのも、猫を可愛がったりするのも悪いことではありませんよ。推し? 私は『推し』の感情を持ったことがないので、なんとも言えません。しかし、推しも愛情表現のひとつでしょうからわるいことではありません」