とはいえ、ゆうちょ銀行やかんぽ、一般銀行の預金の一部、公的年金の原資は、基本的に個人マネーだ。個人は直接国債を保有している比率は低いものの、間接的な保有比率も含めると、50%超になる。

しかし、年代別保有比率を見ると、60歳以上の高齢者が約60%を占める。高齢者世帯は、公的年金に貯蓄の取り崩し分を加え、生活費に充てているが、それにより間接的な国債購入の原資となっている金融機関から資金が流出していくことになる。

個人向け国債の年限の多様化は、今後、減少傾向をたどると思われる個人の間接的な国債購入原資に代わるものとして、直接的な国債購入を増やしていこうという思惑が政府に見え隠れする。

事実、財務省は現役世代に国債投資をアピールすべく、思い切ったPR方法を打ち出した。25歳以上のビジネスパーソンを対象にしたフリーペーパー「R25」に、3年物個人向け国債の広告を出したのだ。「国債を持てる男子は、女性にモテる!!……か!?」というコピーをつけ、婚活男子をターゲットに、「国債に投資する男性は堅実で結婚相手として最適」と思わせるような内容になっているが、海外メディアから「破れかぶれ」とこき下ろされた。

個人金融資産に占める20代の保有比率は、わずか0.5%(金融広報中央委員会データより)。財務省のお役人はそんなことは先刻承知のはず、それでも広告を打たざるをえないのは、日本の財政問題が深刻な状態にあるという事実を逆説的に物語っている。

※すべて雑誌掲載当時