硬直化のもう一つの理由はコネ入社

そして、社内の硬直化を招いたもうひとつの原因は、コネ入社が異様に多いことで、それも日枝氏の指示によるものだとボヤく人事担当者がいました。

たとえばジャニーズ事務所の副社長でメリー喜多川の長女、あの藤島ジュリー景子氏も役員秘書室に勤務していました。安倍首相の甥にあたる岸信夫元防衛大臣(引退)の次男・岸信千代、加藤勝信財務大臣の娘など、大物がズラリと並びます。ほかにも、大物財界人の親族、広告代理店やスポンサー筋の関係者、そして、悪口を書きそうな大手出版社/週刊誌の幹部の親族も入社しています。

すべてがコネ入社かどうかは証明できませんが、人事担当者が、上からの指示での採用が多いと言っていたことは事実です。

何しろクーデターを起こした1992年時点で55歳、2024年にようやく取締役相談役となりましたが、87歳の現在まだ取締役という肩書がつく以上、役員会に出席するわけです。これだけ長く権力の座にいた人間は、相談役になっても実際の権勢は同様だというのが私の取材の経験則です。

フジテレビ・やり直し記者会見の様子
写真=編集部撮影

視聴率は落ち、社内の士気も落ちているのに、日枝体制が続いたのは、テレビ事業以外の収入が多く、経営基盤が強いため、給料が他局に比べても高かったことが大きいとされています。例えばある資料によると、フジ社員の平均年収は1621万円、視聴率が高い日本テレビの社員の平均年収は1296万円。これだけ差があれば、仕事が面白くなくても、経営陣は安泰で、組合からのつきあげなどもありません。

逆にいえば、給料を下げず、番組の制作費を減らしてゆけば、番組の人気は落ちても、経営陣は安泰ということになります。2010年以降の日枝体制は、まさにそういう形であり、日枝氏の意向に逆らう人間は左遷か子会社へ。そして、意に沿うゴマスリだけが出世する構造になりました。しかも、フジテレビの場合、コンテンツにこだわりのある重鎮が多く、いつまでも、彼らがヒットさせた作品と似たような番組しか認めない雰囲気が存在しました。月9(月曜9時)のトレンディードラマはたしかにヒットしましたが、2010年以降は、もはや恋愛ドラマに若者がほとんど興味をもたないのに、ずっと恋愛ものを続けていました。