要因①人前に出られない

ただ、1月9日に発表した声明では、女性とのトラブルを「事実」と認めつつも、「暴力はなかった」「示談が成立した」「芸能活動を支障なく続けられることになった」ことを強調していた。これは少なからず「芸能活動を続けたい」という意思表示だろう。

事務所「のんびりなかい」のウェブサイトに掲出した「お詫び」と題する文書の一部

しかし、この声明が世間の猛烈な怒りを買ったことで、その気持ちは一気に引退へと傾いたのではないか。少年時代からアイドルとして人前に立ち、MCとして番組の顔を務めるなど、最前線で注目を集めることの難しさやプレッシャーが中居ほど体に染みついているタレントはいない。それは筆者が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)などの取材時にも感じたことであり、本人があえて「のんびりなかい」という会社名を選んだことからもうかがえる。

声を発することなく文章の発表に留めたことから、「もう人前に出られない」という意識がうかがえた。実際のところ、スポンサーのいるテレビは難しくても、配信コンテンツなら芸能活動は続けられるはずだが、それすら選択肢にないのは、これまで感じてきた難しさやプレッシャーに加えて、9日の声明で猛批判を受けたからではないか。

とはいえ、トーク力でMCという芸能界のトップにのぼり詰めたタレントだけに、口をつぐんでの引退は理解が得られづらいだろう。

要因②守秘義務

もう1つ、中居の電撃引退にふれるうえで忘れてはいけないのが、相手女性側との示談における守秘義務。本来、これは女性側だけでなく、中居の仕事も守るためのものだが、今回はこれがあだになったという感もある。

会見をしたところで、話せないことばかりであり、自分の言葉で語ることはできない。さらに、そんな会見を開いても、さらに怒りを買ってしまうだけで意味がない。もはや示談の意味合いは薄く、逆に身動きが取れない状況になってしまったという芸能人ならではのケースだろう。

そんな身動きの取れない状況が、「世間の人々は中居が何をしたのかわからないまま憶測を目にする機会が増え、批判するしかない」という結果につながってしまった。中居がどれだけの悪事を犯したのかはわからないが、語れないからこそ「相当悪いことをした」という見方で集約されがちなのは確かだ。

そして見逃せないのは、週刊誌報道の中に相手女性の「許せない」というコメントがあったこと。芸能活動という点では、示談や守秘義務を無力化させるようなコメントであるほか、これが世間の批判につながっていった。

世間の人々にとって「芸能人における疑わしきはグレーではなくクロだろう」。第三者に過ぎないことはわかっていつつも、「自分たちが納得できるか」という基準で人間の是非を決めようとする世の中に変わったのかもしれない。

いずれにしても、示談という民法上の和解よりも、民意に左右されやすい世の中になったことが、中居の引退を早めた理由の1つだろう。