兵士1700人の大脱走、起死回生は望み薄

①ウクライナの戦況

侵攻開始当初はロシア軍の猛攻に押されていたウクライナ軍。

米バイデン政権の巨額援助を受けた反転攻勢が成功した2022年の秋、ゼレンスキー大統領はロシア軍を一気に追い込むために、バイデン大統領に高度な兵器の追加供給や使用制限緩和を訴えた。

だが、ここでバイデン氏は躊躇する。追い詰められたロシアが核兵器使用に踏み切る可能性を怖れたためだ。結局この弱腰が仇となり、プーチン大統領は形勢を再逆転させることに成功した。

現在、東部戦線で戦うウクライナ軍は兵員と弾薬の不足が深刻化し、士気も落ちて1700人が集団で「大脱走」、さらに敵への投降も増加するなど、起死回生が望み薄となっている。

「勝利はあと一押し」に見えるが…

ゼレンスキー大統領の戦争指導の稚拙さや政府の腐敗も目立つ中、ウクライナ軍は一方的に押され、ロシアが併合を狙う東部ドネツク州とルハンスク州のいわゆるドンバス地方前線で重要拠点を次々と奪われている。2024年だけで小国ルクセンブルグの面積より若干大きい2800km2を喪失したのだ。

一方、ウクライナ軍は2024年8月にロシアの西部クルスク州への越境攻撃を敢行することにより、ロシア軍主力をクルスク方面に転用させて、ウクライナ東部のロシア軍の攻勢を弱めようとした。占領地を休戦交渉の材料に使う意図もあったとされる。

ところが、ロシアは北朝鮮軍の助けも借りながらクルスクの被占領地の半分を奪還。ドンバス正面のロシア軍主力を逆に強化して、ウクライナ軍を押しまくっている。ロシアは2025年春までにクルスクの被占領地をすべて取り戻すと見られている

全領土の20%を奪われたのみならず、東部前線におけるウクライナ軍がついに崩れる可能性さえ指摘される中、プーチン大統領が早期にトランプ次期大統領の停戦仲介に応じる動機付けは、表面的にはない。あと一押しで勝てるように見えるからだ。