米国公演の圧倒的成功

シルク・ドゥ・ソレイユ公演は、ケベック州内外の観客を魅了した。既成のサーカスならば必ず登場する動物は、ここには一切いない。磨き抜かれた人間の美と知と技を見せつけるのだ。当初は、カナダ芸術振興財団のバックアップによる1年間だけの時限パフォーマンスだった。ところが、ケベック州政府が価値を認め、翌年の支援も申し出る。まったく新しい現代のサーカスは、劇場的な要素を際立たせつつ、強力なパフォーマーを採用し、公演内容をアップグレード。国内を巡り、評価は否が応でも高まっていく。

87年、飛躍の時が来る。初の米国公演を敢行。その革新的なパフォーマンスは、目の肥えた観客を魅了し、メディアをも驚かせた。四方を客席で囲まれたステージには緻密なデザインが施されている。人間技とは思えないアクロバティックな妙技は、スリルに満ちる。カラフルな照明と時に官能的な音楽が観客を高揚させ刺激する。米国公演の圧倒的な成功は、シルク・ドゥ・ソレイユを現代のエンターテインメントの頂点へと押し上げた。