国算英理社も一方通行の授業にしない
プロジェクトの他に、基礎学習の時間として、小学校では「ことば」と「かず」の時間がある。「ことば」は一般的な教科でいう「国語」を学ぶ時間。「かず」では、「算数」を学ぶ。「ことば」と「かず」はあわせて週7時間設けられている。中学校では「国語」「数学」「英語」「理科」「社会」の5教科で合計週12時間ある。
こうした教科の時間ではオリジナルの教材が使われる。教員が一方的に話をする講義型の授業ではなく、プロジェクト同様、子どもたちの発言を活かしながら授業が展開されていく。
きのくに子どもの村学園では、「感情面の自由」「知性の自由」「人間関係の自由」の3つの自由を重視し、「自由な子ども」を育む教育目標を立てている。これはイギリスのサマー・ヒルという学校の「自由教育」を根幹とした教育方針だ。学ぶ内容にも、子どもと大人の関係性にも、この方針が色濃く表れている。
子どもの村学園には「先生」はおらず、子どもたちは自分たちのサポートをしてくれる存在を「大人」と呼んでいる。「ねえ、堀さん」「ぷーちゃん、これは何?」とニックネームや「さんづけ」で話しかける。
チャイムがなくても子どもは戻ってくる
授業でも休み時間でも、一般的な学校で耳にする「静かにしなさい」「早く席につきなさい」といった先生の指示は聞こえない。チャイムがないので、子どもたちは時計を確認して時間になると、自ら教室に戻る。
北九州子どもの村中学校の校長の高木秀実さんは、公立の小中学校で8年間勤務し、その後、当学園へ移った。子どもの村学園と公立校との最大の違いは、「大人が子どもを評価する存在ではない」ということだと語る。
「公立校にいる時に、自分が子どもを評価する立場であることにすごく戸惑っていたんです。大人もできないことがたくさんある人間ですよね。それなのに子どもたちに『5』や『1』といった評価をくだしていかなければいけない。もしかしたら、テストの時にたまたま体調が悪かっただけかもしれないのに、です。そこに違和感や葛藤がありました」
きのくに子どもの村学園には、テストや試験はない。宿題もない。
では、当校にとって大人とはどんな存在かと尋ねると、「子どものそばにいて、困ったら時々助言をしてくれたり、楽しいことを提案してくれたりする“便利な人”です」と高木さんは笑う。そして、大人は子どもたちがさまざまなポイントに関心を持てるよう綿密に学びの環境を作っている。