絶対盛り上がるコンテンツなのにライバルがいない

そして正月3が日にはめでたいムードの番組は多くても、しびれるような真剣勝負が見られるものは少ない。同じスポーツではサッカーの天皇杯決勝が1月1日午後に放送されていたが、今年は11月23日に開催済み。しかも1月1日以外に決勝が行われるのは4年連続となっている。

たとえば、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)や冬の全国高校サッカー選手権大会は、「敗退したら競技から引退の選手が多い」「全国放送される」という点で箱根駅伝と同様であり、人気コンテンツであることは間違いないところ。

ありえないことだが、もし正月3が日にこの2つの決勝戦が放送されたら箱根駅伝に近いレベルで盛り上がるかもしれない。「正月3が日の生放送」「学生スポーツの頂上決戦」はそれほど特別なものがあり、箱根駅伝の絶対的なアドバンテージとなっている。

阪神甲子園球場
写真=iStock.com/Loco3
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さらに言えば、かつて放送されていた「正月3が日の風物詩」とも言われる特番そのものがほとんどなくなってしまったことも箱根駅伝の勢いを後押ししている。今では正月3が日しか放送されないおなじみの長寿特番と言えば『爆笑ヒットパレード』(フジテレビ系)程度であり、かつての『新春スターかくし芸大会』(フジテレビ系)などは終了してしまった。

『芸能人格付けチェック!』『とんねるずのスポーツ王は俺だ‼』(テレビ朝日系)は正月3が日以外にも放送されるようになり、その他はレギュラーバラエティの特番ばかり。「正月3が日のみ」という風物詩になりうる特番が少なくなったことが、箱根駅伝を絶対的な存在に押し上げた感がある。

むしろ「24時間テレビ」を超える

そして最後にもう1つあげておきたいのが、日本テレビの局を挙げた取り組み。

日本テレビにとって「箱根駅伝は夏の『24時間テレビ』と並ぶ2大イベント」という位置付けであり、総力を結集して制作・放送されている。局内の各部署が連携して作り上げる大型特番であり、相互理解を深め、一体感が増し、スキルアップにつながり、それが局と各部署の伝統になっていく……。

局員たちにとって年に一度の重要なイベントであり、どこか学園祭や体育祭のようなムードも感じさせられる。

むしろ「正月3が日に放送される」という特別感や、「世間が休みのときに働く」というテンションの高さは『24時間テレビ』以上のものがあり、それが視聴者に伝播しているところもあるのだろう。もともと日本テレビは実績にシビアな局として知られているだけに、高視聴率を続けることでプライドが満たされるのか。箱根駅伝を語るときの彼らはとても誇らしい表情に見える。