投資マネーを排除し、マンガ文化を守るのは非上場の出版社

集英社、講談社、小学館、秋田書店、白泉社と言ったマンガ出版社は非上場企業が多く、ここに直接外部から大きな投資マネーや、その意を汲んだ経営者や株主が入るということは考えにくいという状況で、これこそ日本出版界の伝統的経営体制です。このあたりが、ゲームやアニメといった、上場企業が大手を占める他のエンタメ業界と大きく違うところでした。

それゆえ経営が大資本や投資マネーから独立した状態を維持し続け、最も重要な作品づくりに拙速なマネー理論が侵食しないということが、日本のマンガづくりの根幹部分を守護してきました。これが本当に大切なことであることは、ここまで繰り返してきたとおりです。

2021年に600億円を調達した現カカオピッコマしかり、このめちゃコミック買収劇しかり、近年マンガ業界の伸長に大きく貢献した電子コミックプラットフォームを経由して業界に大きな資金が入ってきています。

国内電子コミック市場は、これ以上大きな成長は見込めない

マンガ業界の状況を見ると、これまで伸び続けた国内電子コミック市場は、緩やかな伸びとなってきていて、踊り場を迎え、これ以上の大きな成長は望めないところまで来ています。そこで、次の一手となりそうな方向性は大きく3つほど大きな方向性が見えています。

1.海外展開
2.ライセンスビジネス(IP展開加速)
3.ウェブトゥーン

現時点のめちゃコミックは、実は3つとも手を付けています。「Comicle」というブランドで海外展開も始めていますし、IP展開も自社オリジナル作品で展開中、ウェブトゥーンも『オークの樹の下』という作品をヒットさせ、韓国と連携するなどしています。

この折に、更なる展開をはかるには各分野への投資が必要でしたが、元の親会社の帝人はグループ本業以外の事業は売却すると宣言、今回の買収劇となりました。その受け取った側のブラックストーンは、巨大なファンドを運営し、投資をしてより大きな企業価値をつけて、M&Aした企業の上場や再売却で利益を得る企業です。

つまりこのあと、上記の1~3に投資が入ることが予想されるのですが、おそらくこの金額はかなり巨大なものとなりえます。