一方、単語学習は「埋め立て工事」に似ている。土を少しずつ海に放り込んではいるのだけれど、その土が海面に見えるまでには何の変化もないと思ってしまう。そこに至るまでは莫大な時間と労力が必要なため、途中で諦めてしまいがちだ。しかしだんだん海底に土が溜まっていくように、英単語も頭のなかに少しずつ蓄積されている。コツコツと頑張っていれば、英文を読むスピードは確実に早くなる。気がついたときには、英文をスラスラと読みこなせているはずだ。

文法書の丸暗記は不可能かつ不必要

英語力を高めるためには、文法も重要だ。単語は、「ある参考書の収録語をすべて完璧に覚える」ということができる。しかし文法は、「文法書の内容を完璧にマスターする」というのは不可能だし、その必要もない。私は「文法が苦手です」という人には、いつも「長い時間をかけて少しずつ慣れていってください」とアドバイスしている。

実をいえば、私も文法は苦手だ。冠詞や前置詞の用法、不規則動詞の活用、to不定詞の使い方……。これらを完璧に覚えるのは難しい。「会話だけ上手くなればいい」という人は覚える必要もないだろう。しかし「英語を仕事で使いたい」という人や「TOEICの点数を上げたい」という人は、少しずつ場数を踏んで覚えていってほしい。ただ、ひとつだけ例外がある。英文には絶対に主語と動詞があるということだ。「何が」「どうした」という骨格となる情報は必ずある。英文を読み解く際の最大のポイントなので、忘れないでほしい。

「TOEICのスコアが上がらない」という相談を何度か受けたことがある。勉強の方法には共通点がある。試験の本番を想定して問題集に取り組む。回答後、1問ずつどこが間違ったかを確認する。そして付属のリスニング用CDも何回か聞く。この方法で何冊か解いた――。