月5万円も保険関係の支出があった理由は“ポイ活”
その代表例は保険でした。保険関係(生命保険、医療保険、個人年金保)の支出は月計5万円にのぼっていました。それぞれ控除になる金額を基準に内容を決めているため、保障内容は“帯に短し、たすきに長し”といった中途半端なものばかり。
まず生命保険は、小さな子供がいるのに、定期保険で死亡保障が1000万円程度と、なんとも目的が見えない金額。もちろん、住宅ローンを組む際「団信保険」には入っていますが、私どもの考えとしては、団信保険はあくまで万が一のことがあっても持ち家を失わないためのもの。もし、夫婦のどちらかが亡くなれば稼ぐ力は2馬力から1馬力に減り、この先の貯金計画は一気に崩れます。
遺された親子の生活を考えると、少なくとも1000万円以上は保障があったほうが安心です。そこで、「保険料を抑えながら大きい保障を備えられる、収入保障保険に入ったほうがいいのでは」とご提案しました。
よって、死亡保険は少しコストアップすることに。逆に、コストを下げられるのが医療保険でした。入院や手術の際に1日1万円保障される手厚いコースに入っていましたが、果たしてそれが適切なのか。
公務員は、一般の会社員より福利厚生が充実しています。例えば、入院して高額の医療費がかかった場合、一般的な所得の会社員であれば、高額療養費制度により医療費の自己負担金は約8万円以下で済むのに対し、地方公務員の方は「地方職員共済組合」に加入していれば、自己負担金は2万5000円のほか食事療養費程度で済むケースもある。自己負担の2万5000円も、この夫婦には1700万円の貯蓄があるわけですから、十分対応できますよね。
そう考えると、入院や手術の保障より、高額療養費ではカバーできない三大疾病にかかる治療費を補う保険を選んだほうがいざというときに役立つでしょう。
続いて、個人年金保険。この支出額が大きかったのです。確かに控除はありますが、「増える効率」で考えると、どうなのでしょうか。NISAをしっかり活用して資産を増やしていくのと、どちらが長い目でみたら増えるのか、一度立ち止まって考える必要があります。
いずれにしても、控除に執着するあまり、本質を見失っているように見えます。ポイント目当てに不要な買い物をしてしまうケースと似ていますね。
住宅ローンは一気に完済するより、資産を残し運用した方がお得
住宅ローンに関しては、負担のない返済額(現状月12万円)を設定し、変動金利で組んでいます。ただ、勝俣さんは、年末時の住宅ローン残高に応じて所得税が控除される「住宅ローン控除」を意識しながら、将来的に繰り上げ返済を視野に入れています。勝俣さんの場合、住宅ローン控除が適用されるのは、借り入れてから10年まで。
そのタイミングで繰り上げ返済して一気に完済すれば、控除の恩恵を最大限受けたうえ、余計な金利を払わずに済むため「お得になる」という考えもあるでしょう。
しかし、一気に完済できるほどの預貯金残高があっても、あえて返さずに残った資産で長期運用して利息を得る方法もあります。もちろん、投資が100%うまくいくという保証はありませんが、一般的には、返さないで運用を続けるほうが年数%のリターンを得られることもある。金利負担がかかっても、それをカバーしてなおプラスになるほど、運用益のリターンを期待できるからです。
そう考えると、よほどお金が余っていれば別ですが、預貯金をなくしてしまうよりは、その預貯金も含めて運用に回したほうが、資産は増える傾向にあり、長い目で見て「お得」といえます。
ただ、勝俣さんは、投資をすることに対し、「元本保証されないからリスクがある」と、かなり慎重で消極的です。そうした心理・警戒心を持つことは大事ですが、私どもは、投資は自分の許容範囲の中で可能な分だけリスクを取ればいい、と考えています。むしろ、子育て期間に千万円単位の預貯金を完済に回して失うほうが、リスクはあるかもしれません。