「産まない理由」を減らすのは難しい
本当に、少子化は解決すべき課題なのか。
社会学者の赤川学(著)『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書)では、本来それ自体に価値があるはずの「男女共同参画施策」を、少子化対策の「手段」として用いることの危うさについて論じられている。
ジェンダー平等は少子化になろうがなるまいが達成されるべきであり、子供が増えないことを前提とし、産む選択にも産まない選択にも中立な社会制度設計(=負担の分配)をするべきではないか、と。
「子どもの数は、減ってもかまわない。そのかわり、ライフスタイルの多様性が真の意味で確保される『選択の自由』と『負担の分配』に基づいた制度が設計されていれば、それでよいのだ。GDPで測られるような経済成長や豊かさが仮に減少したとしても、画一的なライフスタイルをほとんど強要され、不公平な制度を続けるよりは、少子化がもたらす負担を共有しながら、誰もが自ら望む生と性を謳歌できる社会のほうが、はるかにましだ」
女の人権を損なわずに妊娠・出産や子育てができる世の中を作ることと、少ない人口でも社会を維持できるような技術を生み出すことと、どちらが実現可能なのだろう。
産まない理由が並んだスプレッドシートは、これから行が増えるのか、減っていくのか――。たぶん増えていくんだろうなという気がしてならない。