「最大でも3割」豊田章男氏の未来予測が現実に…
ところが、アルコット教授らの試算によれば、消費者向けの購入補助金がない場合、EV新車登録台数が最大で30%減少する。
この割合を2024年上半期に単純計算で当てはめると、上半期の販売台数が60万台から42万台にまで減ってしまう。現時点で多くの一般消費者が「ガソリン車の不便で高価な劣化版」と見るEVへの需要は弱いからだ。
また、トランプ次期大統領と共和党の支配する米議会がインフレ抑制法の消費者向け税額控除に関する条項を廃止あるいは縮小すれば、米自動車市場におけるEVのシェアは15~20%縮小する可能性があると、米調査会社グローバルデータが11月6日に予想した。
その結果、2030年の米自動車市場に占めるEVシェアは28%と、バイデン政権の目標である50%やグローバルデータの従来予測である33%よりもさらに低くなる。トヨタ自動車の豊田章男会長が予測する「EVの市場シェアは最大でも3割、残りはハイブリッド車など」という未来予測がいよいよ当たりそうなのだ。
「お願い、補助金を止めないで」
こうした中、EV生産で1台当たり最大7万ドル(約1000万円)ともいわれる赤字を垂れ流す米自動車大手のフォードやゼネラルモーターズ(GM)、米クライスラーの親会社である欧州のステランティス、さらに日本のトヨタやホンダなども加盟する米業界団体の自動車イノベーション協会(AAI)が、大統領選後の11月12日にトランプ次期大統領に対し、「バイデン政権が設定したガソリン車向けの厳し過ぎる燃費効率向上基準を緩和してほしい」「EV購入補助金を継続してほしい」と要請したことが注目されている。
背景にはEVメーカーが投じてきた多額の開発資金の問題があると思われる。
米ニューヨーク・タイムズ紙は、自動車のモデルには開発から発売まで4~5年という長い時間が必要であり、政府の産業政策や温暖化ガス排出基準がコロコロ変わると中長期の経営計画が狂うからだと解説した。
また、米自動車研究センター(CAR)によれば、フォード・GM・ステランティスの「米ビッグスリー」3社だけでも過去3年間に1460億ドル(約22兆5313億円)もの巨額投資をEV開発や生産施設に対して行っており、ニューヨーク・タイムズ紙も「EV大手テスラ以外のメーカーでは赤字が続き、投資が回収できていない」ことが背景にあると分析している。
加えて、共和党が支配するジョージア州など多くの南部諸州ではEV工場やEVバッテリー生産施設が次々と稼働を開始しており、地元の雇用や経済に貢献している。これらの州選出の共和党議員や州知事たちは、インフレ抑制法の廃止や縮小で企業向けの補助金がカットされ、EV関連雇用や経済効果が失われることを懸念している。