漫才のコンテスト「M-1グランプリ」で評価されるネタとはどんなものか。2008年「M-1」チャンピオンであるNON STYLE石田さんは「同業者であるプロの芸人が評価するのは『やられた!』と思うネタ。だから笑いどころがわかりやすい歌ネタは高得点を獲得しづらい」という――。

※本稿は、石田明『答え合わせ』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。

M-1グランプリ2024の告知
撮影=プレジデントオンライン編集部

なぜM-1で「歌ネタ」は評価されにくいのか

漫才のネタに優劣はない。これは当然ですが、ことM-1という大会に限っていえば、たしかに評価されにくいネタはあります。

その筆頭は「歌ネタ」です。

理由はシンプルで、歌ネタは笑いのポイントを作りやすいからです。

誰もが知っている歌を取り上げて、それをちょっと変えたり、いじったりする。お客さんは元ネタを知っているわけだから、「ちょっとおかしいポイント」、つまり「どこで笑えばいいのか」がわかりやすい。

こんなふうに笑いのとり方がわかりやすいので、たとえ会場ではウケても、「今、一番、面白い漫才師」を決める大会で歌ネタに高得点をつけるのは、笑いのプロとして躊躇するところでしょう。

漫才がどんどん多様化するなかで、こういう見方も、今後は変わっていくかもしれません。ただ現状では、「M-1らしさ」の点で、あまり評価が高くないということやと思います。