エヌビディアの時価総額が3兆4300ドル(約520兆円)となり、アップル社を超えて世界首位に返り咲いた。TSMCは熊本県に進出するなど、半導体業界が好調だ。その要因は何なのか。実業家の堀江貴文さんとジャーナリストの後藤達也さんの著書『堀江・後藤流 投資の思考法』(ニューズピックス)より、一部を紹介しよう――。

半導体バブルは「一過性」のものなのか

【後藤】近年のホットトピックである半導体業界を取り上げましょう。

半導体と聞いてもなじみのない方も少なくないと思います。しかし、近年のAIの進化と盛り上がりを深く理解するうえで半導体の存在を無視することはできません。コンピュータが自動で大量のデータを解析し、データの特徴を抽出する技術ディープラーニング(深層学習)において、半導体が必要不可欠となります。

国内外の半導体関連の注目企業の株価の動きを一見すると、株価そのものは過熱していたように見えるかもしれません。ただし、こうした動きに比例してAIが世界を変えているのは事実です。

エヌビディアを見ても、PERは40倍程度。もちろん世の中の全体的な対比では高いかもしれませんが、「すでに高い利益を稼いでいる」という意味では、2000年代のドットコムバブルのような状況と異なります。

AIが一過性のブームで終わるのではなく、経済や社会に大変革をもたらすのであれば、その技術の中心を担う物理的な素材である半導体業界の盛り上がりも、一過性の「ブーム」ではないと見ていいでしょう。

TSMCは業界の覇権を握り続ける

【堀江】一口にAIや半導体といっても、各社その内実はさまざまである。エヌビディアは工場を持たないファブレスの半導体設計の会社であり、TSMC(図表1)は半導体の製造を行っている会社だ。つまり、各社は水平分業をしている。各社の株価を考える際にも、こうした業界の構造を理解しておく必要がある。

とりわけ、すでに半導体製造のシェアを押さえているTSMCは今後も強いポジションを維持し続けるだろう。TSMCは、車載用の古いタイプのCPU(後述する)をはじめ、あらゆるタイプの半導体を製造している。