部署異動でリモートワークから通勤必須に

きっかけは、大津さんの部署異動でした。それまでリモートワークでも問題なかったディレクター業務から営業へ異動となったことで、連日のように会社に行かなければいけなくなってしまったのです。隣接県から通勤している人も多くいますが、大津さんの家は、最寄り駅から徒歩35分の距離。バスを利用していますが、行きも帰りもラッシュが凄まじく、会社に着く頃には疲労困憊だと言います。

ビジネスマンの群衆
写真=iStock.com/AzmanL
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そんな状況では体も壊しかねないと売却を検討したところ、なんと不動産会社から出された査定金額は800万円。大津さんの家の市場価値は、購入時の3年前と比べて半分近くになっていたのです。そして現在のローン残高は、住宅ローン約1000万と、リフォームローンの約550万円。大津家には今現在約1550万円の借金がある状況ですが、家を売ったとて残債はカバーしきれず、700万円以上の借金だけが手元に残ることが判明したのです。

なぜここまで査定金額が低くなってしまったのでしょうか。実はそこには、はっきりとした理由があったのです。

まず、立地です。値崩れを起こしにくい物件はほぼすべて徒歩10分圏内であり、「徒歩35分」の物件は、はじめから売却をしない=終の棲家としての選択肢と言っていいと思います。もちろん大津さんもそのつもりでいたわけで、なかなか人生はままならないわけですが……。

「自分好み」の家にリノベーションしていた

さらに価値を下げてしまう要因となったのが、リノベーションです。築30年の家をリノベーションしたなら、値打ちが出るように思いますよね。しかし、大津さんの行ったリノベはただのリノベではなく、まさに“終の棲家”仕様になっていたのです。

実は大津さん、ご夫婦揃って大のロードバイク好き。賃貸マンションの狭さからずっと諦めていたそうですが、念願の一軒家を手に入れたことから、駐車スペースを“ロードバイク部屋”へと改造。さらに、アニメや特撮好きでもある大津さんは、これまで集めたフィギュアなどのコレクションを飾る棚もあちこちに設置しました。また、ペットが飼えるようになったことから猫を迎え、猫用の小さなドアを作るなど、これまで賃貸暮らしでできなかったあれこれを思う存分実現した、まさに“理想のリノベーション”を成し遂げていたのです。

ただ、このリノベーションは当然、“大津家仕様”のものであって、万人に広く受け入れられるものではありません。となると、再びリノベーションが必要になる可能性が高く、査定においてマイナスの一要因になってしまったのです。