他の保険と比べ物にならないほど搾取されている

やっとの思いで「私は1年に1度くらいしか病院に行っていませんが……」と返すと、

「個々の話をしているのではありません。全体の話です」とバッサリ。

大阪社会保障推進協議会事務局長の寺内氏はこう憤る。

「組合健保や協会けんぽに加入している人も現役世代は元気にたくさん働いて、やがて疲弊して、定年して国保に入る頃に病気を患うことが多いのです。それは若い人はほとんど病気をしないでしょう。でも60代になったら多くの人が病気をするんですよ。それで病気を患っている時は国保加入者なのです。若い加入者が多い社保(組合健保や協会けんぽなど)が国保を支援するのは、私は当たり前だと思いますね」

社会保険や国からもサポートを受け、国保は運営されている。それは間違いない。しかし加入者の半数以上が平均所得100万未満というグループの中で、年200万円以上稼ぐ低中所得者は他の保険と比べ物にならないほど保険料を搾取されていると思う。

「このメンバーでがんばりなさいといわれても…」

佛教大学社会福祉学部准教授の長友薫輝氏も、「国保は今や無職の人、年金受給者、非正規雇用の人々が多く集まる保険になりました。所得が低い人たちで、かつ年齢が高くて病気を発症するリスクが高い、つまり医療費がかかる集まり。このメンバーでがんばりなさいといわれても……加入者にとって過重な国保料です」という。

病院の待合室
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加えて国庫負担率が年々低下している。再び寺内氏が補足する。

「国保はもともと保険料負担でまかなう制度設計にはなっていないのです。1983年までは収入全体の約6割を国庫支出金が占めていましたが、84年から低下しました」

現在はその半分以下という。

「減らされた国庫負担分を被保険者の保険料に肩代わりさせていることが保険料高騰の大きな要因です」