「106万円の壁」を越えると手取りが19万円減

⑤ ④の人が社会保険加入対象になると……

これまで130万円の手前の129万円に年収を抑えていた④の人は、社会保険料がかかることで手取りが126万5450円から106万8701円となり、19万6749円もの減少になります。20年間働くとすると393万4980円もの減少です。一方、厚生年金の増額は年間15万2302円にとどまり、手取り減少分をカバーするには25年11カ月と、気が遠くなりそうです。

⑥ ④の人が年収を105万円まで減らすと……

④の人が「106万円の壁」にかからないよう、年収を105万円に抑える選択肢もあります。そうなると手取り収入は103万9750円となり、129万円のときの手取りと比べると、22万5700円の減少です。それが20年間続くと仮定すると451万4000円の減少です。この場合、厚生年金の増額はありませんので、収入を減らしただけとなります。

150万円超でも厚生年金を増額できるのでお得

⑦ ④の人が年収を155万円まで増やすと……

③のケースのように、年収129万円のときと同じくらいの手取りになるまで、働く時間を増やすという選択肢もあります。時給にもよりますが、週5時間くらい増やすことができれば、不可能ではなさそうです※5

そうすると手取り年収は126万4341円ですから、減少はわずか1109円となり、20年間でも2万2180円です。一方、厚生年金の増額分は年間17万4455円ですから、2カ月受け取れば手取りの減少を上回ります。

ただし、年収が150万円を超えますので、夫の配偶者特別控除が満額の38万円から36万円に減額されます※6。もし、夫の税率が20%であれば、夫の所得税は4000円増えます。とはいえ、20年間でも8万円ですから、厚生年金を増額できるほうがはるかにお得です。

【図表3】「106万円の壁」に直面したときのシミュレーション
筆者作成

以上の7つのシミュレーションで確認したように、税金や社会保険料の負担だけで損得を判断してしまうと、長期にわたる家計戦略を誤ることになりかねません。「106万円の壁」という社会保険の適用拡大は賃金上昇の流れと相まって、思い切って壁を乗り越えるチャンスでもあります。

※5 マイナビ「2022年12月度 アルバイト・パート平均時給レポート」の全国平均時給1177円を基に計算
※6 給与収入1220万円以下の場合

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