後悔なく寿命を使いきるためにはどのような衣食住が必要か。医師の和田秀樹さんは「例えば、食に関しては、お肉を食べると、セロトニンという幸せホルモンの分泌が増え、精神的に安定し、その結果、意欲や思考力も高まる。また、ビタミンCは認知症を抑制して張りのある脳を作り、男性の場合、寿命を6年延ばしてくれる」という――。

※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

脳
写真=iStock.com/Paul Campbell
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好きなものを食べ、よく歩くと、脳の基礎体力がつく

高齢になるほど、コレステロールや塩分が気になり、さっぱりしたものや粗食に切り替える方も多いと思います。

けれど、年齢を重ねた方は、いろいろと配慮をするということは前提として、時には食べたいものを満足に食べるほうが、脳にも体にも栄養が行き届き、また、人生の質も上がると思います。

「肉は食べすぎてはいけない」などという説もありますが、お肉を食べてタンパク質やアミノ酸を摂取することは、頭にも体にもよい影響をもたらしますし、加齢とともに低下していく幸せホルモン、「セロトニン」の正常な分泌にもつながり、メンタルも安定しやすくなるでしょう。

そして多くの人にとって、食は人生における重要な楽しみの一つです。その要素を極端に削ってしまうということは、生きる喜びが失われてしまうということ。また、たとえば肉や甘いものなど、何かを「食べたい」と思うということは、今、脳や体が特定の栄養素を欲しているサインだと考えられます。そういった体からのメッセージに応えることは、健やかな人生につながっていくと思います。

幸せな気持ち、わくわくする気持ちによって、脳内に「ドーパミン」という幸せ物質の分泌量が増えます。これが前頭葉の活性化を促し、思考力や意欲が高まるのです。

毎日、体調も顧みずに高カロリーなものを食べるのはもちろん推奨しません。ですが、時には自分の内側からの声に寄り添って好きなものを食べ、脳と心を喜ばせるとともに、人生の満足度を上げることは、とても重要だと思うのです。

たとえば肉を食べるときは、肝臓の代謝機能が弱まる夜には摂りすぎない、あるいはたくさんの野菜といっしょに食べる。そういった工夫をしながら、好きなものを楽しむという姿勢を大切にしていただければと思います。

筋力や免疫力の面から言っても、高齢者のほとんどの方が、食べすぎより食べなさすぎに注意すべきだと思います。ちょっと小太りの人のほうが長生きするというデータもあります。私は高齢者のダイエットなど、とんでもないと思っています。頭にも体にも栄養が行き渡らなくなり、肉体的にも精神的にも老け込んでしまいます。

また私は日頃から皆さんに、外でのお散歩をおすすめしています。

コロナ禍で外出しなくなった高齢の患者さんたちは、皆さん著しく筋力、体力が衰えてしまい、ヨボヨボとしてしまいました。外を歩いて心身を活性化させるのは、人としての生命力の維持に関わることなのです。

体のためにと無理に激しい運動をするのは、活性酸素を過剰に発生させ、細胞の損傷を引き起こす可能性があるのでおすすめしません。ゆったりとした気分でお散歩するのがシニアには最適だと思います。外に出て日の光を浴びることでセロトニンが分泌されますから、心が安定するとともに、頭の回転もよくなっていきます。

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