106万、130万、150万…立ちはだかる年収の壁
この130万円の壁以外にも、配偶者控除の対象となる103万円の壁(2018年に150万円に変更)や社会保険に関する106万円の壁などがあります。企業によっては一定の収入以下の配偶者に家族手当を支給するところもあります。
こうした壁を回避するためには月収を10万円前後に抑えなくてはなりません。つまり非正規労働をしろということです。
こうした「壁」を超せば、既婚女性は被扶養者からはずれて、年金保険料も健康保険料もすべての社会保険を自分の収入から負担しなければなりません。となると、各種保険料負担が収入の増加分を上回る「逆ざや」現象が起きます。もし損をしたくなければ、170万円以上稼がなければなりません。だけどそうなると拘束時間が増えます。仕事をしても家事や育児を担当しなくてはいけない女性たちは、わざわざその壁を乗り越えようとはしません。妻が稼ぎを増やすことに賛成しない夫もいます。彼女たちは自発的に非正規を選ぶようになり、また「130万円の壁」「103万円の壁」を超さないように「就労調整」をするようになります。
「女性は低年収でいい」というメッセージ
この制度は、女性は低収入でいいというメッセージです。こうした制度をつくって、女が働きすぎないように、これまでどおり家事や育児を担当して、多く収入を得ようとはしないように誘導してきました。
パート先で「正社員にならないか?」と誘われるような優秀な女性がいても、あっさりと断ってしまいます。彼女たちは、「壁」を超えないほうが有利だと誘導されているからです。その結果、不利なパート就労は、「本人の選択」と自己責任に帰せられてしまいます。悪循環です。