談志の真骨頂、裏切り芸

落語には必ず導入の「枕」がある。小噺から始め、頃合いのところでサッと羽織を脱いだら本編に入るという、古来の様式美だ。

ところが晩年の談志さんときたら、どうだったか。たとえば、あるとき伺った高座は、一言一句覚えているわけではないが、概ね、こんな具合だった。

「いやあ、とっちらかっちゃってねえ。まったくやる気がないです。今は家族と離れて寂しく暮らしているわけで……なんて話は聞きたくもねーだろうけど、噺家が噺をやりたくねえってんだからしょうがない。本番をやる気がない人間を、わざわざ金を払って見に来ている、あんた方はバカだ。なんて言っている俺が本当のバカなんだから、どうにもしょうがねー」