商品の売上の1%をNGOに寄付

1990年代から、ヨーロッパ諸国では、環境NGOが中心となり、ウェブやマスメディアを通して、傷つく仔象や親を殺されて保護されるオランウータンの子どもの映像などが配信・報道されるようになります。

このような運動の高まりの中で、WWF(世界自然保護基金)などの団体が中心となり、2001年に国際NPO「RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)」が設立されました。

サラヤは2005年のRSPOに第3回の円卓会議からメンバーとして参加。2010年には持続可能な生産が行われていると認められたパーム油を使用する製品を認証するRSPO認証も取得しています。

ちなみにRSPO認証は、いまや日本国内250社を超える多数の企業が取得しています。国内企業でその先陣を切ったサラヤはさらに、自社独自の環境保護への取り組みを展開します。

実行したのは、ボルネオ島熱帯雨林の回復と生物多様性保全を目的とした新たなNGO「ボルネオ保全トラスト(BCT)」の設立です。

そして、民間企業に求められるのは活動資金の提供だと心得たサラヤは、パーム油を使ったヤシノミ洗剤等の商品の売上の1%をBCTに寄付することにしました。

BCTに積み立てられた基金を原資に、ケガをしたり孤児になったりしたボルネオ象を保護・飼育する施設をつくりました。こうして、ボルネオの環境保全と地元の貴重な財源であるパーム油生産の両立をはかる取り組みを行ったのです。

象が幸せなら、きっと人も幸せ

このような経緯から2012年にサラヤが発売したのが、『Happy Elephant』シリーズです。

象が幸せなら、きっと人も幸せ。ボルネオの生態系の頂点にいる象が幸せなら、きれいな水と環境が保たれ、いろいろな生き物と人間が共生する。

そんないのち輝く地球でありたいとの思いを具現したのが、『Happy Elephant』シリーズです。そのシンボルとして「森を歩く象」をかたどったロゴが生まれたのでした。

深井賢一『売れる「値上げ」』(青春出版社)
深井賢一『売れる「値上げ」』(青春出版社)

このような取り組みを積み重ねた先の、『Happy Elephant』のヒット。顧客にとっては、商品を買うことで、支払った代金の一部がボルネオ島の自然環境や動物たちの命の未来につながっていくという、「ちょっといいコト」をした気分になれる価値が付加されます。

しかし、何より『Happy Elephant』が人を引きつけているのは、その誕生までのエピソード、ストーリーです。

代島氏がシンポジウムなどで講演をするたび、『Happy Elephant』シリーズを誕生させるきっかけとなった、ボルネオ島で見た傷ついた仔象のエピソードを、じっと聞き入っている人もいるそうです。

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