栄養が偏らない食生活を送るためには、何が必要なのか。医師・作家の鎌田實さんは「僕はたまごをお勧めしたい。たまごには『ビタミンCと食物繊維』を除くすべての栄養素が詰まっており、スーパーパワー食品だ」という――。

※本稿は、鎌田實『長生きたまご』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

現代のスーパーマーケットの棚に野菜
写真=iStock.com/Itsanan Sampuntarat
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ビタミンDは「きのこ類、魚類」、そして卵黄

中高年にとって、筋肉は快活に動ける体を保つための資産です。同じ理由で、僕は歯と骨も大事な資産だと思っています。歯はしっかり食べていくために、骨は筋肉の基礎として大事ですよね。

具体的には、歯は、定期的に歯科にかかり、食べられる口を保っていくのが大事ですし、骨は、骨粗しょう症など加齢によって起こる病気を防いでいきたいと思っています。食事では、歯や骨の健康に欠かせないビタミンやミネラルを十分に摂るよう心がけています。

まず注意して摂りたいビタミンの筆頭にあげるのはビタミンDです。というのも、ビタミンDは、現代の生活で不足しがちな栄養素であるのに、豊富に含まれる食品は限られていて、摂りにくいからです。

手軽にビタミンDが食べられるのはたまご(卵黄)のほか、「きのこ類」「魚類」に限られます。

また、ビタミンDは、紫外線を浴びることで皮膚でも生成されるのですが、年齢とともに皮膚上で生成できる能力は低下し、屋外で活動する機会も減ると、さらに生産量は減るので、中高年になったらより多くのビタミンDを食事から摂る必要があるのです。

「低カルシウム血症」を招き、歯を失うリスクも

ビタミンDが不足すると、腸でのカルシウムの吸収が減り、腎臓でもカルシウム再吸収が低下するので、カルシウム不足から「低カルシウム血症」を招きます。すると骨の軟化(骨軟化症)や骨粗しょう症のリスクが高まります。

歯科学の情報を見ると、口腔内で歯を支えている骨の軟化が起こると、歯周病につながり、歯を失うリスクが高まることもあるうえ、ビタミンD不足は歯のカルシウム吸収や石灰化にも影響するとされています。

つまり歯にも、骨にも大事、それがビタミンDなのです。

また、精神医学の分野では抑うつなど精神症状とビタミンD不足の関連が指摘されているため、ヨーロッパの国々では日照時間が短いシーズンには予防的にビタミンDのサプリメントを利用する人が多いようです。

日本でも日照時間が減少する秋以降にうつ傾向の人が多くなる地域があるという調査結果もあります。都市で、日当たりが悪いところで生活している人の場合なども、ビタミンDに注目する必要があるように思います。