経済の悪化に対する強い危機感の表れか

9月24日、中国政府は複数の経済対策を発表した。今回の対策の主要な役割を担うのは金融政策だ。目的は3つでわかりやすい。

1つは、主要金利を引き下げ経済全体で資金の融通を支えることだ。2つ目は株価対策だ。金融機関が本土株を買いやすくなるよう資金供給量を増やす。3つ目は不動産市況を支援することだ。具体的には、ローン金利を引き下げて家計の金利負担を軽減する。また、主要な銀行に資本を注入して経営を支える。国債などの発行も増やす。

近年の中国の経済政策と比較しても、今回の対策の規模は広範囲だ。共産党政府内で、経済・金融市場の悪化に対する危機感はかなり高まっているのだろう。24日に中国人民銀行(中央銀行)が利下げなどの対策を発表すると、その直後から、中国の本土株、香港株は急上昇した。

2024年9月29日、演説する習近平氏
写真=中国通信/時事通信フォト
2024年9月29日、演説する習近平氏〔新華社=中国通信〕

本格的な景気回復をもたらすとは思えない

しかし、今回の対策の効果が本格的な景気回復をもたらすかといえば、その可能性は必ずしも高くはないだろう。現在、中国経済が抱える最大の問題は不動産と地方政府の債務問題なのだが、それらに対する直接の解決策が見当たらないからだ。不動産にかかる不良債権を解決しない限り、不動産市況の本格的な回復は見込めない。不動産市況が回復しないと、個人消費の盛り上がりも期待できない。

また、地方政府などの債務問題の深刻化により経済成長率は低下し、財政悪化の懸念も高まるだろう。それは、社会福祉や年金の問題にもつながる。中国政府が問題への直接の対応策を避けている間、中国の景気後退懸念が払拭できるとは考えがたい。

9月後半、中国政府の経済政策運営方針は大きな変化を見せた。20日、中国人民銀行は1年物と5年物のローンプライムレートを据え置いた。中国内外の主要投資家の間で金融緩和の必要性は高いが、国債利回りの過度な低下を防ぐ政府の意向もあり、時間をかけて利下げは進むとの見方が増えた。