高校は、農業高校の畜産科に進んだ。学校では牛や豚、ニワトリを飼っていて、どの動物を専攻するのか選択する。江頭さんが選んだのは、ニワトリだった。その理由も、ユニークだ。「牛や豚とも触れ合えるけど、ニワトリは抱っこができるから」。

とはいえ、養鶏の道に進む気はなかった。動物に関わる仕事といえば、ほかに動物園の飼育員やペットショップの店員などもあるが、「それも違う」と思っていた。理由は明確だ。

「中学校の時にペットショップ、高校の時に動物園に職業体験に行ったんですよ。その時に、動物園の動物はペットじゃないから飼育員は動物の体調管理とかサポートするのがメインだし、ペットショップも基本的には動物のお世話が中心で、動物と触れ合うことができないと知りました。動物をかわいがれない仕事は違うかなと思って」

運命を変えた「ふくちゃん」との出会い

珍獣ハンター以降は明確な目標もなく、「高校を卒業したら専門学校に行って、トリマーになろうかな」とぼんやり考えていた江頭さんの運命を変えたのが、「ふくちゃん」。

高校3年生の時、校内で猛禽類を保護するプロジェクトが始まることになり、江頭さんも参加した。そのプロジェクトを主導する外部の専門員より、「学校で保護施設を運営するなら、生徒がまず猛禽類に慣れたほういい」という提案があり、学校が鷹を買い取って、生徒が世話をすることになった。

ふくちゃんと出会い、鷹匠という仕事を知った
筆者撮影
ふくちゃんと出会い、鷹匠という仕事を知った

このプロジェクトを指導する専門員の名字から一字を取って、鷹はふくちゃんと名付けられた。専門員が学校に来るのは多くても月に一度で、その間は生徒たちが資料を読み込み、育て方を調べた。鷹についてなにも知らなかった生徒たちは1年間、鷹の生態について学び、それが卒業研究になった。

ふくちゃんは高校に来る前に鷹匠による訓練を受けていたことに加えて賢く、高校生が見よう見まねで腕に乗せて放つと、しっかりと飛んで、呼べば戻ってきた。そのうちに、「もっとちゃんと飛ばしてみたい」と思うようになった江頭さんはある日、専門員に尋ねた。

「猛禽類に興味があって、本気でやりたいなって思うんですけど、猛禽類に関わる仕事ってなにかありますか?」

すると専門員が教えてくれた。

「神戸どうぶつ王国で鷹のショーをしてる人とか、鷹で追い払いをしている人がいるよ」

鷹匠の第一人者に一目ぼれ

最初に一般客としてショーを見学した江頭さんは次に、専門員から紹介してもらってアポを取り、「追い払い」の現場を見学した。追い払いとは、大量の糞や大きな鳴き声で敬遠されているハトやカラス、ムクドリなどを、天敵の鷹で追い払うことを指す。この時に出会った鷹匠と鷹に、江頭さんは心を奪われた。

「高校にいたふくちゃんも、フライトショーで飛んでいた鷹も同じハリスホークという種類なんですけど、ぜんぜん飛び方が違いました。人に飛ばされているんじゃなくて、まるで野生の鷹が飛んでいるように見えたんです。その姿が本当にかっこうよくて。雷に打たれたってこういうことだなと思いました」