ゴミ屋敷にはどんな人が住んでいるのか。公認心理師の植原亮太さんは「ゴミ屋敷は独り暮らしの人に多いと思われがちだが、2人以上で暮らしていてもなることがある」という。第2回は、アルツハイマーに罹った父と同居する妻の事例を紹介する――。(第2回/全4回)

※事例は個人情報に配慮し一部加工・修正しています。

崩壊したキッチン
写真=iStock.com/shaunl
※写真はイメージです

認知症はゴミ屋敷と密接に関係する

今回は、認知症によるゴミ屋敷問題を取り上げます。

認知症は、アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症などの総称です。これらは「認知機能障害により、判断力が低下して、社会生活機能が障害される疾患」で「大脳の特定部位が障害される」と定義されています。

発症初期から中期までは運動機能などは維持されているのも特徴ですが、やがては脳の病変が全体へと広がっていき、末期にはほぼ寝たきりの状態になるのも共通していると言っていいでしょう。

その認知症の中でも代表的なのがアルツハイマー型認知症です。おそらく読者の方々が想像する認知症といえば、これのはずです。認知症全体の約70%を占めているとされ、代表的な初期症状は短期記憶の障害です。最近の出来事から忘れていく(覚えられなくなる)のが特徴ですが、やがて「社会生活機能が障害」される部分も大きくなっていきます。

具体的に言うと、いままではできていたことができなくなってくるのです。たとえば、洋服を正しく着られなくなる(着衣失行しっこう)、ふたがあるのに水を注ごうとしてしまう(観念失行)などです。よって、周囲のサポートが欠かせなくなっていきます。これを欠いているときに、ゴミ屋敷化してしまうことがあるのです。

※ 疾病定義は「日本精神神経学会『認知症診療テキスト』」を参考。

2人以上で暮らしていてもゴミ屋敷になることがある

認知症によって、どのようにゴミ屋敷化するのか。そのパターンは2通り存在します。

●独居+認知症の発症
●家族問題+認知症の発症

独居している方が認知症を発症して、やがて生活技能が低下していきゴミ屋敷化するというのは想像に容易いのではないでしょうか。周囲からのサポートを得にくい状況だからです。

その一方で、もともと起きている家族問題の上にさらに認知症が加わってゴミ屋敷化してしまうこともあります。このケースは困難化することが多いように思います。認知症以外の問題も影響が色濃いからです。

家族の認知症を理解せず、世話をしない。

ゴミ屋敷化しても改善しない、改善の指導にも従えない。

こうした多問題をはらんでいるのです。家族がいるのに、その家族からのサポートがないのです。

これから紹介していくのは「家族問題+認知症の発症」事例です。

おそらく、ごく普通の家族で育ってきた方には想像もできないことだと思います。しかし、大変な家族問題を抱えてきた人にとっては、共感できるか心当たりさえあるものかもしれません。