金さん、銀さん、虹キングの衣装がずらり…
観客のざわめきを残して、Shokoさんは舞台から消えた。同時に、銀色の振り袖に身を包んだ氷の女王が現れ、次に金色の振り袖が続く。ド派手成人式の端緒となった、金さん・銀さんの衣装を思い起こさせる。
トラの刺繍入りの着物を着こなした男性の腕には、張り子のトラ。観客に向かって牙を剥くこのトラは、北九州伝統の山笠人形職人、富田能央氏の作品だ。池田さんはこのショーのために頼み込んでこのコラボが実現した。
次々と現れては観客の目を奪い、舞台から消えていく着物たち。池田さんは、その様子を舞台袖からじっと見ていた。しかし、本当はファッションショーが始まる前からすでに視界はぼやけ始めていた。
「ド派手な着物」がニューヨークで受け入れられたワケ
会場にいる大勢の観客が、みやびのショーにスマートフォンのカメラを向け、「Amazing!」と声をあげた。観客がみんなみやびの着物を、作品として見入っている。その様子に鳥肌が立ったと振り返る。
ショーの最後、涙が止まらない池田さんは花道に押し出され、スポットライトと拍手を浴びた。右へ、左へよろめきながら観客に頭を下げ、「サンキュー」と繰り返しながらランウェーを歩いた。
「品がない」「伝統を汚す」と批判を受け、「荒れた若者の象徴」とされた池田さんの着物。今彼女は、世界の舞台で「着物デザイナー」として喝采を浴びている。
最高潮のままショーが終了し、池田さんは海外メディアから質問攻めに遭っていた。その場にいた多くの関係者がコメントを求め、連絡先を交換しようと列を作った。
日本の着物の美しさが、ニューヨークで認められた――。池田さんはそう言うが、それだけだろうか。ショーのオープニングパフォーマンスを担当したShokoさんは言う。
「着物の美しさだけが評価されたわけじゃないと思います。彼女が今までどんなふうに自分の仕事に向かい合い、チームメイキングをして、このショーを作り上げたか。全てが表れていたからこそ、喝采を浴びたんだと思います」
これからの池田さんについて尋ねると、Shokoさんはこう答えた。
「The universe knows everything!」(神のみぞ知る!)