自分の老後をどうするか

さらに、離職して介護に専念する場合は、さらに大きなデメリットが生まれます。

経済的なデメリットは大きいでしょう。介護に関する費用は、ある程度、介護保険でカバーされますが、自分の生活に関わる費用は出ていくばかりになります。介護はどれくらい続くかわかりませんから、経済的な不安も大きくなるでしょう。

自分の将来についても考えなくてはなりません。介護には必ず終わりが来ます。たとえば50歳で介護離職して、5年後に親が亡くなった場合、55歳で新しい職場を見つけるのはなかなか難しいでしょう。10年後ならなおさらです。自分の人生を考えても、できるだけ会社は辞めないでいた方がよいと思います。

精神面でも、介護後のダメージは大きくなります。

仕事を辞めて介護に専念していると、親との生活が全てになります。そういう状態を長く続け、親が急にいなくなると、心に穴がぽっかり空いて、抑うつや無気力になります。何をすればいいかわからない、どう生きていけばいいかわからないという「燃え尽き症候群」になってしまう可能性があります。

直接の介護はプロに任せる

だからこそ、初手を間違えないようにしてほしいと思います。「親の様子がおかしい」と思ったとき、すぐに「自分が一緒に住んで、介護をしなくては」と考えないでほしいのです。そして、「自分で直接介護しない」という強い意志を持ってください。親が暮らす地域の公的サービスを活用し、プロの手を借りながら、「親が快適に暮らせるようにするにはどうしたらいいか」を考えてください。

まだ足りないところはありますが、日本の介護制度はよくできています。子どもが一緒に住んでいなくても回るようになっています。直接の介護はプロに任せ、自分は仕事を辞めずに今の生活を続けながら、司令塔の役目を担い、時々親の顔を見に行って親孝行するというスタンスの方がうまくいきます。