AVの痴漢モノが中国の犯罪グループを日本に呼び寄せた!
実際に、アジア諸国ではchikanという日本語が通じるほど、AVの痴漢ジャンルは人気だという。それだけではない。筆者が #痴漢 #風俗 とググっただけで、簡単にさまざまな痴漢専門をうたう風俗店を東京で見つけることができた。この「痴漢風俗店」は実際の痴漢事件を未然に防ぐためにできた、という声もあるが、信じる人はいないだろう。
筆者は8月にハンガリーで著名な心理学者、クリスティナ・ヘヴェシ博士のセミナーに参加したが、博士の研究ではポルノ中毒者はセックスを支配欲と混同するために性行為が暴力的になり、他人との親密な関係を結ぶのが難しくなる傾向が高くなるそうだ。ポルノでは登場するパフォーマーが性的モノ化されているから、それを何度も見ている人は生身の人間と親密な絆を結ぶのが難しくなっていくからだという。
また、アジア最大規模の依存症施設である榎本クリニック(東京・池袋など)で加害者臨床を専門とする精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)で、警察庁科学警察研究所の調査から「強姦や強制わいせつの容疑で逮捕された553人のうち33.5%が『AVを観て自分も同じことをしてみたかった』と回答」し、AVコンテンツは性犯罪に確実に影響があると述べている。
とにかく日本の「痴漢大国」は世界中で知れわたっているのは事実だ。現に、カナダやイギリス政府が日本へ渡航する人々にオフィシャルサイトで注意喚起を記しているほどである。
その上、昨年2023年6月8日にBBC News Japanが配信した記事「痴漢動画を売るサイトの裏を暴く……BBC独自調査 日本と中国で」によると、東京在住の中国の犯罪グループが日本の女性を痴漢し、それをコンテンツ化しているという。BBCは中国の犯罪グループを追い、彼らが日本で本物の痴漢を撮影した動画を闇サイトで売っていることを突き止めた。
つまり、日本の性産業がChikanをコンテンツ化しネット上で“輸出”したことで、本物の痴漢犯罪グループを呼んでしまったというわけだ。
また、つい数日前の8月24日には、韓国の人気DJ、SODAさんが悲しい投稿をXにしていた。DJ SODAさんは昨年8月に日本の音楽フェスティバル「MUSIC CIRCUS'23」で痴漢被害に遭ったが、あろうことか、その事件を日本のAVメーカーがパロディ化し、SODAさんを二次被害に遭わせしまったのだ。「この事件をモチーフに日本のアダルトビデオメーカーがAVを制作したという話を聞いてとても悲しくなりました」とSODAさんは綴っている。
もちろん、有名人のスキャンダルをポルノコンテンツ化するのは日本だけではない。例えば、アメリカではビル・クリントンとモニカ・ルインスキーをパロディ化したポルノが出回った。しかし、SODAさんの場合は性犯罪だ。痴漢や強姦などの性犯罪をパロディ化するアダルトコンテンツは規制されるべきではないだろうか。(以下、後編に続く)
【取材協力】
中村ホールデン梨華
炎上から学ぶ社会をめざすAD-LAMP代表
広告コンサルタントを経てブリストル大学修士社会起業論課程在学中。SNSにて「広告炎上チェッカー」(@Enjocheck)として活動する。広告倫理に関する講演やワークショップを行い100以上の広告を分析。炎上広告の市民による代案を展示する「市民広告 Towards Change展」を英国で開催。