40ミリ機関砲を使っているのには理由がある

これは専門家でも意見が分かれるようですが、私は経験上、40ミリ機関砲のほうが“強い”と思っています。その理由については機密に関わることなので詳しくは語れません。

ただ、事実だけ述べておくと、実は海上保安庁も以前は76ミリ機関砲を搭載した巡視船を持っていましたが、ある時期から76ミリをやめて現在では40ミリを使っています。これを庁法25条と関連付けて「庁法25条があるから“非軍事”の海上保安庁は強力な76ミリ機関砲を持てなくなった」と誤解している方もいますが、そういうわけではありません。40ミリが海上保安庁にとってベストだという結論にいたったので、40ミリ機関砲を使っているのです。

武器にしろ、船舶にしろ、一部の性能だけを比較して議論してもあまり意味はない(地に足のついた議論にはならない)と思います。

「軍隊」だから急に強くなるわけではない

「海警は法執行機関だが軍事訓練を受けているから事実上の軍隊だ。有事の際には軍事活動を行う軍隊にもなれる。非軍事機関の海上保安庁では到底敵わないのではないか」という意見もありますが、それにも根拠はありません。「何となくの印象やイメージ」です。

これまで海上保安庁は実際に尖閣で海警と対峙たいじし、互角以上に渡り合ってきました。それなのに、なぜ海警が軍隊の看板を掲げたとたんに、海上保安庁が負けることになるのでしょうか。

問題は、海警が軍隊か否かではなく、実際に“強い”かどうかです。

たとえ海警が「事実上の軍隊」だとしても、特別強力な武器を保有しているわけではありません。法執行機関が保有する武器は「犯人の抵抗を抑止するための武器」もしくは「逃げていく船を止めるための武器」です。海警船が「元軍艦」だからといって、対艦ミサイルのような強力な武器を搭載しているわけではありません。せいぜい76ミリ機関砲です。

少なくとも現在の海警の装備を見る限り、海上保安庁で十分に対応できると思います。

有事下で海警が現状の装備のまま軍隊の看板を掲げ、「俺たちは今から軍艦だ!」と宣言したところで、法執行機関にはできないような特別強力な戦い方が突然できるわけでもありません。海上保安庁としては、海警が軍隊の看板を掲げていようと、法執行機関であろうと、やるべきことは同じです。