ムシロをかぶって上陸すると、日本人娼館に連れていかれた

春代たちを乗せた船はようやくシンガポールに到着する。密航のためここでも人目を忍ぶ必要があった。夜まで待って迎えに来た小型船に乗り移り、ムシロをかぶって港に上陸した。

女街に「這って行け」と指示され、ムシロをかぶったまま道を這うように進み、ある建物にたどり着く。そこでは風呂と食事が用意されていて、春代たちは全身「熊」のように真っ黒になった汚れを落とし、バナナなどを食べた。その様子を女郎屋から来た年配の女性たちが見て品定めをし、値段交渉の末、春代たちをそれぞれの女郎屋へ連れて行った。春代が連れて行かれたのは、日本人が経営する女郎屋だった。それはマレー街と呼ばれる、日本人娼館が集まっていた通りにあった。