老後のひとり暮らしが破綻して、自宅を「ゴミ屋敷」に変えてしまう人がいる。『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)を書いた山村秀炯さんは「ゴミ屋敷化の初期症状は風呂場などの水回りに現れる。シャンプーやボディーソープのボトルには要注意だ」という――。
風呂場
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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きれいだったマンションが、みるみるゴミ屋敷化

80代の女性、木原さん(仮名)は、過去に一度の離婚歴があり、それからずっとひとり暮らしをされています。

木原さんは一般企業を定年まで勤めあげました。普段は割引されている食品を買うなど節約が趣味のような倹約家で、老後は資産運用もして数千万円もの預貯金があります。

名古屋市内や近郊の新築分譲マンションを住み替えたりしながらひとり暮らしを謳歌していて、非常にしっかりとした、自立した方という印象を受けます。

ところが、年齢を重ねるにつれて様子が変わってきます。

足腰が弱くなり、判断能力にも衰えが見え始めました。すると次第にちょっと重い荷物やゴミを持つことが難しくなり、やがてゴミを捨てること自体が面倒になってきます。一方で自炊をする機会はどんどん減り、コンビニやスーパーで買った弁当や総菜のゴミが逆に増えていくばかり。

こうして、きれいだったマンションの部屋が、みるみるうちにゴミで埋め尽くされていきました。

「なんでも自分でできる」という思い込み

実は地域の民生委員や役所の方が定期的に見守りに来ていたのですが、木原さんは「心配などしてほしくない!」と玄関口で揉めてしまうこともあったようです。長年ひとり暮らしをしてきたために、「なんでも自分でできる」と頑張ってしまったことが、かえってよくなかったのでしょう。

とはいえ、実際に部屋が着々とゴミ屋敷化していっていることは、木原さんご自身が見ても明らかでした。自分は大丈夫だと思いたい気持ちと現実とのギャップを突きつけられ、精神的にもかなり落ち込む悪循環に陥ってしまいます。

このタイミングで私が相談を受け、施設への入居をサポートしました。現在は施設で快適に過ごされています。

私が入ることで結果的に解決はしましたが、ひとりで元気に暮らしていても年齢からくる衰えはなかなか自覚できない(認められない)し、体力、気力の減退は確実に住環境を劣化させていきます。そして精神的にも悪影響を及ぼすようになるので、そうなる前に周囲のフォローが必要です。