角膜に穴が開き、熱い涙が流れる

――感染症を起こすと失明に至るケースもあるとのことですが、どのくらいの期間放置すると危険なのでしょうか。

病原体の強さやその時の目の状況によりますが、一晩つけっぱなしにしただけでも黒目が白く濁って感染症の病巣ができていることもあります。

白い濁りは、コンタクトを装着したままだと気づきにくいですが、放置すると角膜に穴が開き、そこから熱い涙が出て、あげく失明してしまうこともあります。「角膜穿孔」と言います。

――角膜穿孔はどういったメカニズムで起きるのでしょうか。

たとえば皮膚が傷ついた場合も、傷口が菌で化膿していると治りが悪いですよね。しっかり菌を除去できれば、そこに新しい皮がはって治っていく。

目の場合は、角膜は厚みが0.5ミリほどしかない。菌は組織を溶かすので角膜をどんどん削っていく。この病態が治療で止められない場合は角膜に穴があいてしまう。

あまり体験される人は少ないとは思いますが、ケガをして出血をしたとします。この場合も生温かい液が皮膚を伝う感覚を覚えます。これと同じで普段の涙の分泌速度とは明らかに違う量の体液(実際は房水という眼内を流れている透明な体液)が体内から流出してくるわけですので、「熱い涙」と感じるのです。

――角膜に穴が開くと、視力も落ちてしまいますよね。一度落ちた視力は戻るのでしょうか。

穴がどの部分かによります。視軸にかぶらなければそもそも視力低下は軽微です。

感染巣が視軸にかぶっていて視力が落ちてしまい、その上で穴があいているとなると視力は戻りにくいです。感染した角膜は、削れる場所があれば削ります。でも、病巣が深いとところにあると、角膜は薄いので半分以上は削れない。そうなると角膜移植しか治療法はなくなってしまいます。

コンタクトの適切な装着時間

――感染症で目が白くなった場合、自分で見てわかるのでしょうか。

よく見ればわかりますね。黒目に白く点ができたりします。最初は激烈な痛みがするというよりは、目やにや充血から始まりますね。あくまで典型例ですが、丸くて小さい点が見える場合はブドウ球菌、急速な視力低下と強い痛みを伴う場合は緑膿菌と、菌によって経過はさまざまです。

通常、涙には殺菌作用のある酵素も含まれているので、少し傷がついたくらいなら感染症などは発症しません。「突き目」といって、森や庭仕事で目に枝が刺さったりすると、真菌(カビ類)によって感染症を起こすことがありますが、コンタクトで目の表面が少し荒れて常在菌が入るくらいなら、感染症を起こすことはありません。

ただソフトレンズはずっとつけていることで、長時間装着する間に目の表面の酸素不足から抵抗力も弱まる。そこに傷がつき、ソフトレンズ上で菌が繁殖することがあると、深刻な感染症に発展してしまうわけです。

コンタクトレンズを入れた若い男性成人
写真=iStock.com/SolStock
※写真はイメージです

――長時間装着しないことと、日々のケアが大切なのですね。

シリコンハイドロゲル配合の高価なプレミアレンズと言われるレンズではなく、従来型のコンタクトを装着できる時間は10時間程度なので、本来は朝7時に起きたら夕方5時には外すということになります。

女性は特にコンタクトをしてからお化粧をして寝る直前までつけている方が多いので、どうしても長時間装用になってしまいます。

現在、簡単な同意書にサインするだけで、量販店やネットで医師の診察や処方箋なしに簡単に買えてしまいます。ですが、コンタクトレンズはそもそも「高度管理医療機器」に指定されていることを忘れてはいけません。

1Dayタイプの使い捨てコンタクトレンズは1回装着して外したら捨てる、ハードもソフトもコンタクトレンズを使用している場合は定期的な眼科受診をすることが重要です。